ターゲット 目次
標的はじゃじゃ馬娘
あらすじ
見どころ
優雅な殺し屋ヴィクター
じゃじゃ馬ロウズ
スランプそれとも転機か
標的を助けるはめに
そして猫がいなくなった
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じゃじゃ馬ロウズ

  さて、殺しの標的となったロウズ。なんでまた、ロンドンで羽振りをきかせるアイアランド系ギャングの親分を、殺しの標的となるほどに怒らせてしまったのか。

  時を少しさかのぼろう。
  ある日、大通りをかなり美貌の若い女性が笑顔を浮かべながら、自転車で走っていた。やって来たのは、国立ブリティッシュ・ミュージアムの美術部門の通用門。
  警報にいたずらして、門衛を別のゲイトに向かわせた隙に美術品の修復室に入り込んだ。
  そこには、友だちの若い男が修復画家としてはたらいていた。ロウズは、彼に強引に「ある仕事」を頼み込んだ。

  頼みは2つあって、1つ目は修復中のレンブラントの名作を借り出すこと。もちろん、何千万ポンド(何十億円)もする名画を修復室の外に持ち出せるわけがない。だが、こっそり持ち出せというのだ。男は断れない。
  2つ目は、その名画の精密な模写、というよりも「贋作」をつくれという頼み。これも男は断れない。
  ロウズの美貌に溺れているのか。それとも、弱みを握られているのか。たぶん、後者だろう。
  ところで、一流の美術館の修復部門にいる画家は、独創的な自分流の作品を描くほどの独創性はないが、高度な描画技法を備えていて、かつまた絵画史などの知識が豊富だ。だから、自分が好きな古典絵画の模写を描くことなど造作もない。だが、模写は模写。贋作商売をねらっても、ばれる場合が多い。
  もっとも、絵の具やキャンバスなどの画材についてその時代のものを用意できれば、鑑定家を騙すほどの作品をつくれるかもしれない。

  さて、そういう下準備を整えて、ロウズはやり手の美術商に扮して、ロンドンの裏世界で名うての金持ち、ファーガスンにレンブラントの名画を売り込んだ。
  もちろん、売り込みでは博物館から持ち出した本物を持ってだ。
  ファーガスンは、さっそく一流の鑑定家(大学教授か)を呼んで、鑑定させたところ、「本物」という評価を得た。
  「美術館が財政逼迫で、こっそり売りに出した……」
  とかなんとか、ロウズが得意の嘘を並べて、ファーガスンに売り渡すことにした。

  売価はなんと100万ポンド。だが、レンブラントの作品が1500万ポンド未満で取引きされることはないから、これでも破格の価格だ。財政危機の美術館がそんな廉価で所蔵品を売りに出すか!? その辺の調査が甘いボスだ。
  そんな超国宝級の名画が裏取引されること自体を疑わない方がおかしい……のだが、これはコメディだ。

  現金と引き換えでロウズは絵画を引き渡した。もちろん、そのときには友人が描いた「模写=贋作」を手渡したのだ。
  ところが、まもなくレンブラントの名画は贋作だとバレた。
  もとより、そんな超有名な絵画が売買されることがあれば、必ず後にも真贋鑑定やら見せびらかしやらがあって、贋作ならすぐに発覚してしまう。そんなことをロウズが知らないはずがない。知ってはいても、そこを強引に無視するところが、この女性のすごい――無教養なというか短絡的な――ところだ。冒険のスリルを味わいたいのだろう。

  裏の世界のボスであるファーガスンは、こんな底の浅い詐欺に引っかかってしまったわけで、面目丸つぶれだ。詐欺師の手口や詐欺師の容貌を身内の情報網に伝えて、自分を騙したのが誰かをすぐに突き止めた。
  何しろ顔が丸つぶれになったのだから、きっちり「落とし前」をつけないと、ボスとしての地位が危うくなる。ライヴァルから舐められ侮られることになる。
  というわけで、一流の殺し屋を雇って、ロウズという生意気な女を殺害させることにした。

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