映像物語と音楽 目次
原題
見どころ
あらすじ
田園の奇妙なコミュニティ
アーミッシュ
ドイツ系移民
生活スタイル
アーミッシュもいろいろ
現代社会とアーミッシュ
「暴力の世界」の目撃
フィラデルフィア
警察組織の犯罪
アーミッシュとともに暮らす
プレインライフ
共同体と個人
ブックとレイチェル
気品ある自己抑制
アーミッシュ村の「異邦人」
鬱憤と憤怒
越えがたいギャップ
ブックの決意
対  決
暴力と非暴力
ラストシーン
現代アメリカとアーミッシュ
情報環境とアーミッシュ
作品理解の壁  言語文化の限界か

◆ドイツ系移民◆

  辞典によれば、アーミッシュとは、18世紀から19世紀にかけてニーダーライン地方やドイツ西南部から新大陸に移住した「プロテスタント再洗礼派( anabaplists )」の一派の人びとだといいます。
  その圧倒的多数は19世紀に移住してきたようです。
  その信仰。宗派の始祖は、もとはローマカトリックの司祭でしたがプロテスタントのネーデルラント再洗礼派に改宗したメンノーです。
  その信条がブルグント地方やフランケン地方、スイス地方に伝播拡大するにしたがって、いくつもの宗派や集団に分かれていったらしいと見られています。
  新大陸では北米一帯に移り住み、いまでは、合州国のオハイオ州、ペンシルヴェニア州、ニューヨーク州などのほか、カナダにも多数の人口と集落を擁しているとか。

  アーミッシュが使う言語は、仲間どうし、村人どうしで語るときにはドイツ語(を基本にした方言)で、外部の人たちとの会話は英語だといいます。ネーデルラント語(オランダ語)も本来は、ドイツ語の方言の1つです。
  子どもたちは、初等学校で公用語として英語を学ぶそうです。一方で、日常生活ではドイツ語的方言が支配的なようです。

  この点、映画では、レイチェルの義父エリは、 John Book (ジョン・ブック)を John Buch (ジョン・ブッフ)とドイツ語なまりで呼んでいました。ジョンをヨーハンと呼ばないのは、それなりに英語化されたドイツ語方言だからでしょうか。

◆アーミッシュの生活スタイル◆

  「アーミッシュ」と一口に言っても、生活スタイルや村落の生活風習は、地方ごと、宗派集団ごとに少しずつ違っているようです。
  だが、一般には、質素な生活、質素な人びと( plain life, plain people )といわれます。
  華美な服装や大量の消費、電機器具や自動車など「現代文明の科学技術、浪費文化」の享受を極力忌避ないし抑制しているということです。
  そして、武器の使用や戦争への参加を厳格に拒否し、国家の政治的ないし行政的権力とのかかわりを避けて、公的な社会福祉政策や財政的支援・助成の制度の利用も回避しているコミュニティが多いといいます。
  その姿勢は、「完全平和主義・非暴力主義」と呼ばれます。
  州や居住地区によっては、公的福祉の利用を忌避しているという理由で、それにかかわる課税・税負担を免除されているようです。

◆アーミッシュもいろいろ◆

  こうして、ほぼ18世紀から19世紀はじめのヨーロッパ農村の生活様式を維持しているといえるようです。
  とはいえ、場所ごと、宗派集団ごとに近代文化=現代文明に対する態度はまちまちのようです。なかには電気機器を利用して、牛乳や肉などの生鮮食品を生産・保存加工・販売している村落、地方もあって、大型の冷凍設備や保冷庫、冷蔵庫などを使用しているところがあるといいます。

  メンノーを信仰上の始祖とするということで、アーミッシュをメンノー派( mennonite )と一括りにする立場もあるらしいです。
  ところが、この映画では、レイチェルが「向こうの村のメンノー派の人たち」と言って、自分たちと明確に区分しています。
  というわけで、彼らのなかでは、信仰の色合いや「オルトヌング」によって、アーミッシュやメンノー派の村落・集団ごとにそれなりにはっきりしたカテゴリー区分があるようです。

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