コントラクター 目次
暗殺者の孤独
原題について
見どころ
あらすじ
暗殺――最後の任務
狂った手順
孤独な少女エミリー
コリンズの策謀
空港での対決
冤  罪
ふたたび間一髪
モールでの戦い
別れと再会
背景にある問題について
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諜報機関の物語
ボーン・アイデンティティ
コンドル

狂った手順

  ジェイムズが案内された隠れ家はロンドンのダウンタウンのアパートメントだった。ウィンチェルはウィットニーという偽名で部屋を借りていた。
  その夜、ウィットニーのコンピュータに「連絡せよという」という指示が入った。ウィットニーは携帯電話で任務実行の命令を受け取った。
  だが、そのさい、コンピュータに指示メイルと電話の音声をメモリーさせた。彼はフリーランスの情報員で、「発注者」が裏切ったり、自分が捕えられたりしたときのために、証拠を保存していた。とくに「発注者」が政府機関の場合には、逮捕・訴追された場合に罪科の軽減・免除理由となるからだ。
  ジェイムズは、ウィンチェルに「気の回しすぎだ」と言ってみたが、自分も含めてフリーランスは、そのくらいの警戒が必要だとは思った。

  翌朝、ジャハールを護送する拘置所から裁判所までの沿道には、いたるところに武装した警官隊が配備されていた。近隣の目立つ建物の屋上には、狙撃警官隊が配置され、狙撃犯の接近を阻止しようとしていた。
  この厳しい警戒網のなかに、ジェイムズは神父に扮して乗り込んだ。教会の鐘楼に怪しまれずに登るためだ。
  やがて護送車がやって来て、裁判所の前に止まった。そして、顔と上半身を毛布で覆われたジャハールが降ろされた。ジェイムズは狙撃銃を構えたが、ジャハールは絶えず警察官たちの遮蔽壁に囲まれていて、狙撃の機会はなかった。
  貫通力の強い銃弾を使用することから、標的以外の人間を殺傷しないように配慮しためだった。狙撃計画の手順はここですっかり狂ってしまった。
  テリーは撤退準備を開始した。
  ところが、ジェイムズは次のチャンスを待ち続けた。


  裁判所に入ったジャハールは、予備審問法廷の判断で、警視庁の尋問を免れて釈放手続きを受けることになった。警視庁の権限を超える外交圧力が働いたようだ。圧力の元は、ジャハールを利用したという過去の汚点を消したい勢力と結びついた機関だろう。
  さて、釈放手続きに向かうジャハールは、庁舎の2回廊下の窓際に立った。チャンスが訪れた。テロリストは、弁護士の説明を受け、窓を背にして勝利の微笑を浮かべた。その瞬間、ジェイムズは引き金を引いた。銃弾を浴びたテロリストは即死した。
  だが、狙撃を敢行する条件としては最悪だった。窓には銃弾が貫通した穴があいていて、狙撃地点がどのあたりか、すぐに割り出されるからだ。多数の警官が、狙撃地点と思しき場所に殺到し、近隣から逃走経路になりうるあらゆる道路が封鎖され、建物への出入りは封殺された。
  狙撃が一度は失敗したと判断したテリーは、教会に車を回すタイミングが遅れた。彼がジェイムズを車に乗せたときには、すでに車での逃亡を阻止する厳戒態勢が整えられたあとだった。
  それでも、障壁を突破してタクシーは一般道路に抜け出した。しかし、武装警察隊の発砲でテリーは首を撃ち抜かれて即死。運転者を失ったタクシーは暴走して、地下鉄の入口階段に突っ込んだ。車は大破して、ジェイムズも腹部に深い裂傷を負った。ジェイムズは傷をジャケットで隠して、地下鉄を乗り継いでテリーのアパートまで逃げた。

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