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臓器強盗 その2

  刑事たちは、マクダニエルの医療履歴を探った。
  すると、かかりつけの医者による血液検査の結果の情報が不正にアクセスされた痕跡が見つかった。不正アクセスの被疑者は、くだんの専門医院の女性看護師だった。
  地区検事局は、この女性看護師を傷害殺人未遂罪で訴追した。

  これまでの調査結果=状況証拠から見て、犯行をめぐる経緯は、
  大富豪が専門医に巨額の金を渡して、適合臓器を持つ人物の情報を入手し、
  その人物の行動を監視して、ある夜、セントラルパークで襲撃して臓器を強奪=摘出して、富豪の娘に移植した
というようなものであったと目された。

  司法当局は、
  金融機関や抵当記録の調査から、大富豪は、巨額の借金に苦しんでいた専門医に200万ドルもの大金を渡したこと
  襲撃にさいしては医師は、医療設備がないところで急いで開腹・腎臓摘出・縫合などの処置を強行したことで、マクダニエルの――多量の出血や感染症、外気の寒さによる低体温症などによる――死亡を期待していたこと
などをつかんだ。


  こうして、看護師に加えて、専門医を共同正犯――同格の共謀者――として訴追した。今回の事件での犯罪行為は、臓器情報の盗み出しから、襲撃・摘出、臓器移植までが一続きの過程と見なされた。そのさい、情報の盗み出しは、襲撃・摘出から移植までの行動と目的を知った上での、積極的関与と見なされた。
  ところで刑法では、犯罪行為への関与・加担の度合いによって「正犯」と「従犯」に区分し、犯行や逃亡などの過程での関与・加担の程度については「共同」と「事後」に区分している。
  犯罪行為を実行する過程での関与・加担の度合いや意思関係での責任については、最重要の責任を問われるべき者が「正犯」。犯行時に正犯の指揮命令に従ったために――たとえば見張りなど正犯の行為を幇助したりして――副次的・従属的な責任を負うべき者が「従犯」。犯罪の企図・計画の過程で共謀したため、同等の最重要の責任を負うべき者が「共同正犯」だ。
  共同正犯には、直接に犯行そのものには加担していなくても、犯行全体の企図・計画や実行命令に携わった者(首謀者)も含まれる。
  また、犯行時にで、犯行後に逃亡や潜伏を助けた者が「事後従犯」となる。

  女性看護師は罪悪感に悩み続けていたが、裁判が進むなかで、医師が看護士をあたかも首謀者と見せかけるような画策を弄したことを知り、法廷ですべての事実を証言した。……襲撃と摘出行為に関しては医師だけが企図・計画したこと、医師は看護師を情報入手の手段として利用したこと、報酬の配分など。

  事件発覚後、大富豪は――見え見えの罪滅ぼし対策として――マクダニエルに70万ドルの信託基金を贈与した。ところが、公判が進むと、事件当時は「後腐れがないように」マクダニエルを死亡させるような要望を医師たちに示していたことも判明した。
  こうして、大富豪が事件の首謀者であることが判明して、有罪評決となった。大富豪が事件全体の方向性を決めるような通奏低音を――装飾旋律の基層で――奏でていたわけだ。何やら、ベートーヴェンの「月光ソナタ」のようなイメイジだ。

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