Law & Order 目次
NYの法秩序を守る者たち
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母子家庭、児童虐待の悲劇
HIVと尊厳死
臓器強盗 その1
臓器強盗 その2
警察組織の腐敗 その1
警察組織の腐敗 その2
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信州の高原の町の旅
小諸街あるき
北国街道小諸宿の歴史と地理を探るため、美しい懐旧の街並みを訪ねる。寺社めぐり案内も。

警察組織の腐敗 その2

  そこで、マックスとマイクは、オファレルの息のかかった警察官たちの行跡を調べようとした。しかし、NYPD全体の人事権を掌握しているオファレルの逆鱗に触れることを恐れる警察官たちは、口をつぐみ、捜査への協力を暗黙のうちに拒否していた。
  だが、証拠保管室の入室記録を見たマックスたちは、犯行の週に、その2週間以前に退職した刑事マクロイが保管室に何度も出入りしている事実を突き止めた。退職した人物が証拠保管室に立ち入ったのは、明らかに異様である。
  ところが、マックスとマイクの事情聴取に対してマクロイは、一切のかかわりを否定し、保管室入室の目的や事情についての陳述を拒否した。しかもマクロイは、明白にオファレル派の人脈に属していた。きわめて疑わしい。

  ところが、捜査が進むと、オファレルはアイリッシュ系の連邦議会議員や市長派の幹部とも癒着していることが判明した。その政派は、訴追された銀行の経営陣である個人――アメリカでは医師責任を特定できない企業・団体の法人としての献金をいっさい禁じてられている――から巨額の献金を受けていることも。
  そして、マクロイは退職直後に、不動産会社の経営者でもある市長夫人――その後市長と離婚――によって便益をはかってもらって、30万ドルの評価額の高級住宅を12万ドルで購入した事実も発覚した。これは経済的利益の供与であって、明らかに贈賄である。
  してみれば、贈賄を受ける見返りに、マクロイは何をしたのか。証拠隠滅にかかわったのだ。
  だが、これらはすべて状況証拠にすぎない。

  さて他方、内部監察課の捜査も、現市長派と結びついているオファレル派の権力の前に壁にぶつかっていた。
  地区検事局の調査も行き詰ってしまった。
  そんなとき、クレイガンが地区検事局を訪れた。クレイガンはベンに、「オファレルと俺の両方を証拠隠滅と収賄腐敗の容疑で訴追しろ」と訴えた。


  その理由はこうだった。
  クレイガンとしては、オファレル派が絶大な影響力をもつNYPDの現在の権力構造のなかでは自発的にオファレル派の犯罪に関する証言をおこなうわけにはいかない。しかし、自分の容疑を晴らすために「仕方なく証言する」ことはできる。クレイガンは証拠を握っているというわけだ。
  オファレルとは地縁や腐れ縁があって正面から衝突するわけにはいかないが、オファレル派の横暴は目に余る、公然と犯罪捜査の妨害するのは許しがたい、というのが本音なのだ。

  検事局はクレイガンとオファレルの2人を起訴して、法廷で敵性尋問(対決尋問)――容疑者に対して検察側がおこなう尋問――をおこなって、クレイガンが描いた筋書きどおりに証言と証拠に関する情報を引き出した。
  さらにクレイガンの証言にもとづいてマクロイに対しても敵性尋問をおこなった。
  その尋問で明らかになったのは、マクロイは、CDのデイタ破壊の実行犯との連絡役だったということだ。証拠隠滅を直接手がけたのは、IT犯罪捜査部門のコンピュータ処理の専門家である捜査官で、マクロイはCDを保管室から持ち出してその捜査官に手渡し、デイタを消去破壊させたCDをふたたび保管庫に戻したのだ。
  そして、マクロイは、犯行がオファレルの指示命令によるものであることを認めた。

  こうして、ニュウヨーク市政庁の幹部とや、さらには連邦議員にまでおよぶスキャンダルが発覚し、銀行の金融犯罪――経済事犯――の証拠を隠滅する陰謀の一端が暴かれた。

  アメリカ社会の一般的風潮としては、組織のために自己犠牲を払うのは愚か者のやることと見られ、日本でのように好意的には評価されることはあまりない。自己の身体・生命・財産を守ることがまず優先される。
  そこで、容疑者(主犯)の強い影響力のもとにある参考人、関係者などをひとまとめに起訴し、尋問で追いつめて、互いの利益相反をもたらし、検察側が尋問で――自分の立場を守るために仕方なく証言したという形に持ち込み――容疑者に犯罪を立証する証言を引き出す戦術はしばしばおこなわれる。この戦術は、民事訴訟でもよく用いられる。

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