Law & Order 目次
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臓器強盗 その1
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警察組織の腐敗 その1
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■3■ 臓器強盗 その1

原題 Sonata for a Solo Organ
意味は「独奏ソロオルガンのためのソナタ」。
  原題の「ソロオルガン」は、事件によって片方だけになってしまった腎臓(臓器)と独奏オルガンとをかけているのかもしれない。
  楽曲形式のソナタは、最初の主題(和音)が提示された後に、主題が副題と相互作用して展開・変形され――転調(変奏)され――、最後にふたたび最初の主題がより高い次元で再現されるという構造。ソナタ形式での楽章の進行とストーリー展開とがオーヴァーラップされているかもしれない。

  初冬のある朝、セントラルパークを巡羅中の騎馬警察官2人がベンチに横たわって失神している黒人紳士ドゥルウ・マクダニエルを発見した。紳士の腹部には切開縫合の跡があって、ひどい失血があったと見られた。ただちに病院の集中治療室に送られて救急治療を受けた。
  意識を回復したのち、マクダニエルは警察の聴取を受けた。
  昨夜19時頃、公園を横切って地下鉄駅に向かう途中で襲われたらしく、突然気を失った。そのあとのことは記憶がない。そう彼は事情を説明した。
  病院の検査では、そのとき片方の腎臓が摘出されていることが判明した。つまり、臓器を奪われたのだ。

  ニュウヨーク市警の刑事、マックスとマイクの調査の結果、マクダニエルは医療技術を持つ何者かに襲われて麻酔され腹部を切開され、腎臓を摘出されたことが確認された。強奪された腎臓は、移植手術に使われたもようだ。
  地区検事局は、悪質な臓器強奪を目的とする傷害・殺人未遂罪で立件する方針を固めた。


  マックスとマイクは最初にニュウヨーク市の腎臓バンクから事情聴取した。
  腎臓バンクは、重い腎臓病患者のなかで腎臓移植手術希望者を登録して順番をつけて、各患者に適合する臓器が見つかり――つまり適合臓器を持つ脳死者が出――しだい、手術の手続きを取ることを仕事としている。だが、ニュウヨーク市だけで毎年、腎臓移植希望者が十数万に対して適合ドナーはわずかに2万に満たないという。そのために、患者のなかには移植を長年待ちながら人工透析を受け続け、適合臓器が見つかる前に重篤化したり死亡することになる者もいるという。
  そこで、富裕な患者のなかには、臓器売買が「黙認」されているインドや中国、東南アジアで移植手術を受ける者もいる。しかし、それらの国では臓器売買と手術が目先の金目当てで、臓器の適合性の検査判定が甘く、感性症対策などのリスク管理がいい加減で、術後に病状が悪化して死亡する事故が後を絶たないという。

  とはいえ、最近は人工透析の医療技術が格段に進歩し、薬剤開発が進んできているので、リスクの高い移植手術に頼るケイスは減少してきている。
  最近では腎臓移植の件数が減ってきたことから、経営危機に陥る専門医療機関が目立っているらしい。というのも、移植手術で大金を稼いできた専門医の多くは、収益が減っても、それまでどおりの贅沢な生活を続けるために借金=負債が膨れ上がっていしまうからだという。

  マックスとマイケル(マイク)は腎臓移植専門委に注目して捜査したところ、最近、長年続いた経営悪化による財務危機を短期間に脱した専門医がいることを突き止めた。100万ドル以上の債務=借金がなくなり、瀟洒な邸宅が抵当解除されたという。
  しかも、その医院で、近頃、ニュウヨークでの屈指の大富豪の娘が腎臓移植手術に成功していた。その女性の体質は特異で、臓器適合性の条件はきわめて限られていて、ドナーが見つからなかった。その適合性条件は、まさにマクダニエルとまったく同じだった。
  ということは、マクダニエルから奪われた腎臓が、大金持ちの娘への移植に使われたことは明らかだった。襲撃と腎臓摘出はほかならぬマクダニエルを狙ったものだったのだ。だが、体質(臓器適合性)についての彼の個人情報は、なぜ、どのようにして漏洩したのか。

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