この映画の「ザ・バッド」という邦題は訳がわからない。 The Bad ということなのだろうが、カタカナ表記の和製英語というわけだ。まあ「老人たちが企んだ悪さ(悪行)」「悪者たち」「品行不良な者ども」というほどの意味なのかもしれないが。
さて、この作品は、これまでごくまっとうに生きてきたニュウヨーク在住の老人たちが、愛する美術品が手の届かない遠方に売り払われてしまうことに腹を立てて、美術品を盗み出そうと悪戦苦闘するコメディだ。
原題は The Maiden Heist 。メイドゥンは「少女」とか「乙女」という意味で、ハイストは「窃盗」という意味なので、「乙女を盗み出す企図 / 少女を描いた名画を盗み出すこと」ということで、そのまま物語の内容を示している。
これほど直截な原題なのに、どうして訳のわからない「和製カタカナ英語」にするのだろうか。輸入・リリース会社のセンスを疑う。
まあ実際にはありえない物語だ。
ニュウヨークの美術館に長年まじめに勤務してきた3人の警備係が、彼らが愛してやまない美術品が北欧に売り払われてしまうことに腹を立て、四苦八苦して美術品を盗み出す、涙ぐましい奮闘記だ。
美術品へのこだわりというか執着心とはこういうものか!?
……と皮肉を込めながら、あらためて想起させる物語だ。老人のファンタジーともいえる。
登場する絵画や彫刻はいずれも架空の作品である。
キャスティングは豪華で、モーガン・フリーマン、クリストファー・ウォーケン、ウィリアム・メイシーという重鎮たを主役に配している。
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