ザ・バッド 目次
愛する美術品のためなら
見どころ
絵画《孤独な少女》
衝撃の作品移転計画
さらにもう1人
さらにもう1人
立ちふさがる壁
贋作を用意できるか!?
手 違 い
フロリダの浜辺で
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ミッション
1900年

さらにもう1人

  絵画盗み出しの方法を検討するために、監視カメラ映像を見ていたチャールズは、意外な光景を目撃した。それをロジャーに告げて、2人で映像を確認した。
  意外な光景とは、同僚の警備員、ジョージの奇妙な行動だった。
  夜間勤務シフトのさいにジョージは、いつも深夜誰もいないフロアで、展示品の古代ギリシアの彫像《勇猛な戦士(戦神)》の傍らで、服を脱ぎ捨てて全裸になって、彫像と同じポーズを取るのだ。それがジョージの趣味なのだ。
  ジョージもまた、この美術作品を深く愛していたのだ。だが、鑑賞の仕方は変わっていて、ヌードでポーズを真似ることで陶酔にひたっていた。

  ロジャーとチャールズは、やはりデンマークに移転されてしまうはずの彫像を「異様なほどに」好んでいるジョージを仲間に引き入れることにした。ただし、あの変な癖を脅しの種に使って。
  ジョージとしては、自分だけの秘密にしていた彫像の奇妙な愛玩方法を脅しの種に使われたことには当惑したが、愛してやまない彫像がデンマークに送られてしまうことには憤慨していた。そこで、盗み出し計画に参加することになった。

立ちふさがる壁

  「三人寄れば文殊の知恵」
  ……とはいうものの、老人3人が額を寄せ合って美術品窃盗の手口を考えることになった。だが、手口の検討には大きな障害が立ちはだかっていた。
  何しろ、3人とも相当にくたびれた爺さんたちで、体力も敏捷性も遠の昔に失っている。それに盗に関してはまったくの素人にすぎない。
  まあそれでも、ジョージが夜間警備のシフトのときに、ロジャーとチャールズが美術館に忍び入って、絵画や彫像を盗み出すことにしようということになった。


  ある真夜中、計画を試してみた。侵入とか搬出を実際、試験的ににやってみようというわけだ。
  ところが、屋根に綱をかけてみても、ロジャーは自分の体さえ持ち上げられないという有様。これでは、絵画を奪うどころか、運ぶことも、持ち出すこともままならない。
  3人が頭を抱えて苦悩しているあいだにも、時間はどんどん過ぎていく。

■「名案」が閃く■
  3人が焦り出した頃、デンマークに搬送する美術品の梱包・荷づくりをする作業が翌週に始まることになった。
  美術館としては、館の勤務員たちからヴォランティアとして作業要員を募集することになった。作業時間は通常の勤務時間をした夕刻から夜間で、梱包した美術品を集積場所に集めておいて、翌朝に専門の輸送業者に引き渡して空港までの運搬をおこなうという計画だった。
  そのさいに、贋作を用意しておいて、本物とすり替えてしまえばいい、という作戦を思いついたのだ。

  そこで、ロジャーとチャールズが荷づくり作業に応募することになった。ジョージは夜間警備の勤務シフトについて、2人のすり替えを補助するという計画になった。
  ところが、この作戦には少なくとも2つの障害があった。
  1つ目は、すり替え用の贋作をどうやって準備するかだ。デンマークでもばれないような出来栄えの作品でなければならない。短期間にどうやって制作するか、これが難問だ。
  とりあえずは、贋作は各自が盗もうとする作品の贋作を用意するという原則でいくことにした。
  2つ目は、日程だった。
  荷づくりの日の夜、ロジャーは妻と航空便でフロリダに旅行に出る予定になっていた。ロウズはすっかりその気になって、旅行を心待ちにしている。
  ロジャーの家庭では、当然のことながら妻が仕切っている。そういう妻の権威に逆らって、ロジャーはどうやって荷づくり作業に参加する理由をこしらえるか、これが難問だった。

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