ザ・バッド 目次
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絵画《孤独な少女》
衝撃の作品移転計画
さらにもう1人
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立ちふさがる壁
贋作を用意できるか!?
手 違 い
フロリダの浜辺で
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ミッション
1900年

贋作を用意できるか!?

  贋作と本物をすりかえればいい……というのだが、あとあとまでばれないような精巧な贋作を用意できるのだろうか。
  さて、チャールズは油彩画を描くのが趣味だった。まあ、アマチュアとしてはそこそこの腕前だった。
  そこで、ロジャーはチャールズに《孤独な少女》と《猫と女》を描かせてみることにした。というよりも、さしあたって、それくらいの方法しか贋作制作の方途を思いつかなかったというべきか。

  そんなわけで、チャールズは《猫と女》を毎日眺めては感動していた――これまでよりもはるかに注意深く眺め回して、構図や筆使い、色の配合などのもろもろを分析してもいたのだ。そんな努力が形に現れ、《猫と女》については、一般人にとってみれば模写として十分通用するような傑作ができ上がった。
  しかし、本物を知り尽くしているチャールズとしては、不満だらけで、ここが違う、ここが不十分だ、と自ら欠点を指摘した。
  だが、ロジャーから見れば、本物と遜色がないように思われた。


  ところが、問題は《孤独な少女》の方だった。
少女の顔つきも体つきも、構図や色相も本物とはかなり違う出来栄えだった。
  まあそんなものだろう。というのも、熱心に見たこともないような作品なのだから、書籍の作品集を見ながら描いても、似せるというまでにはいかないというわけだ。
  チャールズ自身が途中で投げてしまったうえに、作品を熟知しているロジャーから見ると、不満や欠点ばかりとなった。
 思い余ったロジャーは、やはり「プロ」の技術を持つ者に描かせるしかないと考え、ストリートペインター ――路上の画家、すなわち街頭で自分で描いた似顔絵や風景画を売っている人――に描かせることにした。

  これはと思う画家に話を持ちかけたところ、「1000ドルだ」と言われた。ロジャーはしぶとく値切ったうえに、しかも期限を3日後として注文した。代金は、妻のロウズが瓶に貯めている「旅行貯金」から「借りる」――より正確な言い方では、くすねる――ことにした。
  こうして、どうにか贋作を手に入れたロジャーだったが、代金を払った直後に「旅行貯金」をくすねたことが妻にばれて、問い詰められることになった。虎の子の旅行向け貯金なので、しょっちゅうどれほど貯まったかを数えるのを楽しみにしているから、当然のことだった。
  ジョージもどうにか《勇猛な戦士》の彫像を手に入れたらしい。

■ロジャーの苦しい言い訳■0
  ロジャーは「旅行貯金」をくすねたことがばれたうえに、フロリダ旅行の予定を変更することになったため、妻に対して大変厳しい立場に立たされた。
  「ヴェテランとして経験を買われて荷づくり作業ヴォランティアに強く誘われたから」と言い繕ってみたが、美術館長を訪ねたロウズは館長から「作業はあくまで自主申告で強制しない」と説明され、嘘がばれた。
  窮地に立ったロジャーは、頑固な老人を演じて荷づくり作業に強引に加わった。

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