読書家: 時代背景や状況設定という面ではどうでしょうか。
歴史家: 歴史的背景とか状況というものが、それなりに描かれているのは「ナウシカ」を除けば、「ラピュタ」と「豚」ですね。
「ラピュタ」では全般的にのどかというか牧歌的な社会状況ですが、どうやら軍部が支配しているレジームらしい。
というのも、巨大な軍事要塞があるし、飛行戦艦が出てくるし、諜報特務機関がいたるところで暗躍しているみたいだし。
絵描き: 「豚」では、イタリア王国ではファシスト党が臨時政府を握っているらしい。
しかし、軍隊ではポルコの戦友の少佐は、ポルコをかばうために割合自由に動き回れるようです。
それに、ピッコロ工房でも自由に戦闘艇の修理・製造をやっているみたいだし。
統制の効かない社会、政府に正面きって逆らわなければ民衆の自由がある社会みたいですね。
歴史家: この映画は、アニメとしてはかなり現実の歴史に近いくらい時代設定、歴史状況がはっきりしている。
おそらく、1930年代の不況期で、アドリア海沿岸部では仕事らしい仕事がない。
イタリア本土でも、実質的にイタリアの経済的首都、産業首都であるミラノでさえ男たちは出稼ぎに出て家と工房を守るのは女性たち。
政治的には、ファシストが民族主義をかかげて政権を乗っ取り、王権派と対立している。
読書家: それでも航空機は、1920年代のはじめの時期の基本技術のまま発達していった感じですね。
飛行艇は機体のフレイムワークはほとんど木、木材なんですよね。そこにアルミ板で外装というか表面加工してある。すごくロマンがある航空機です。
絵描き: そういえば、「宅急便」でキキが旅立った夜に出会う旅客機、あれも複葉機をそのまま近代化、ハイテク化したようなロマンティックな飛行機でしたね。
いかにも、魔女がご近所に住んでいるという感じの世界のテクノロジーだ。