タワーリングインフェルノ 目次
原題
見どころ
あらすじ
言語の薀蓄
空からの登場
見栄え優先の手抜き工事
交錯する人生模様
火災発覚!
炎との戦い
聳え立つ地獄の業火
阿鼻叫喚、続出する犠牲者
起死回生の鎮火作戦
結   末
高層建築という特異な存在
工法や材質
テロによるWTCビル崩壊
タウワリング

聳え立つ地獄の業火

  パーティは盛況の真っ只中。ダンカンはようやく参加者を取り静めて、避難を呼びかけた。「中層階で『小規模な火災』が発生したので、1階に式典会場を移します。みなさん、整然とエレヴェイターで1階に移動してください」と。
  いくぶん騒然としながらも、人びとはエレヴェイター付近に列をつくった。
  ダンカンは他方、建設工事を請け負わせたシモンズを呼びつけて、怒りをぶちまけた。
「お前の会社が手抜き工事をするから、見ろ、火災が起きてしまったじゃあないか。あとで、この落とし前(損害賠償など)はつけさせてもらうからな」
「いや、材料はすべて建築基準を満たしている。そもそも、工事代金を契約額よりも200万ドルも削ったのは誰なんだ。こっちは、その金額に会わせるために努力したんだ」と反発するシモンズ。絵にかいたような責任のなすり合い。
  とかくするうちに、非常用エレヴェイターは人でいっぱいになり、ドアが閉まり下降を始めた。

  81階では、消防隊が必死の消火活動をおこなっていた。火炎は天井に燃え広がっていた。放水は天井に向けられたが、通風孔や階のあいだの空間が空気と熱の通り道、供給路になっていて、火炎は81階の天井部と階上に拡大していた。そして、天井を支える梁や枠を破壊していた。
  破壊された天井材や梁は、倉庫の入り口で放水をしていた消防士たちの上に崩れ落ちた。その消防士たちを、増派されたティームが焼けて崩れ落ちた建材のなかから、ようやく救出した。
  グラスタウワーの81階前後から上のブロックは、炎の地獄と化していた。外壁とガラスで密封されている空間の内部で、火炎が燃え盛り、高熱であらゆる物質が急速に気化し膨張していた。ついに、ガスと炎の膨張圧は、このブロックの外壁と内壁を打ち破って、大規模な爆発を引き起こした。
  すでに火災は85階にまでおよんでいた。

  86階の居住専用区の1室に耳の不自由な少女とその兄が取り残されていた。そのことに気づいた富裕な中年の女性、リゾレット・ミューラー――このご婦人は心優しく、クレイボーンが詐欺師と知りながら彼の話に付き合っていた。どうやら、生真面目すぎて詐欺師に向かない彼が好きらしい――は、最上階から居住区に降りてきていた。中央制御室では、ロバーツが監視モニター画面でそのことを知り、保安主任のジャーニガンとともに救出に向かった。
  そのときには、居住区までのエレヴェイターは機能していた。
  だが、エレヴェイターを出ると、区画の大半にはすでに火が回っていた。
  ロバーツは決死の覚悟で、立ち込めた熱い煙のなかに突入して、兄妹とリゾレットを目前の危機から救出した。
  ジャーニガンはさらにリゾレットの飼い猫も救出して、階下に降りることができた。ところが、ロバーツたちにはもはや階下に避難する余地はなかった。エレヴェイターの付近には炎が回り、階下への主要非常階段も炎でふさがれていた。
  もはや、ひたすら上に向かって非常階段を昇るしかなかった。だが、数階昇ったところで、その非常階段もガス爆発で破壊され、行く手をふさがれた。階下への踊り場も崩壊してしまった。
  そこで、苦心して別の非常階段に回って最上階近くまで行った。

  最上階からエレヴェイターで下った人びともまた惨劇に見舞われた。
  85階から81階にかけての区間で爆発に遭遇し(扉が開いてしまったため、高熱の炎が襲った)、ほとんど乗客はたちまち焼け死んでしまった。かろうじてエレヴェイターは最上階に戻ったものの、最期の生存者の身体も炎に包まれていた。138階に戻ったのは、ほとんど黒焦げの死体だった。
  ほどなくグラスタウワーの主要電源もダウンした。わずかな部分だけが、非常用電源で動いていた。
 さて、最上階近くまで行き着いたロバーツたちは、大広間(竣工式典の会場となっていた)に出られるはずの扉の前で立ち往生してしまった。なんと、その非常扉の開く方向の床には、余ったモルタルがぶちまけられたまま固まってしまっていた。なんという手抜き工事か。
  非常扉は開けることができないようになっていたのだ。
 ただただ竣工式を急ぐばかりで、グラスタウワーの各部分の完成度や品質、安全性が点検・確認されることすらなされなかったのだ。スプリンクラーは機能しないし、非常扉は開かない…。

  仕方なく、ロバーツは踊り場の天井パネルを開けて、屋上部の設備室にまで昇り、そこから138階の大広間まで行くことにした。そのあいだに、高層区画の消火や視察のために別の非常階段を昇ってきた消防士2人が、リゾレットと子どもたちが待機している場所にやって来た。
  消防士たちは、小型プラスティック爆薬で非常扉の前のモルタル塊を吹き飛ばすことにした。扉の反対側にいるロバーツと打ち合わせながら爆薬を仕かけ、安全な場所まで戻り、リゾレットたちの安全を確保して、2人は爆薬を炸裂させた。こうして、なんとか最上階と非常階段の出入りを可能にした。

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