タワーリングインフェルノ 目次
原題
見どころ
あらすじ
言語の薀蓄
空からの登場
見栄え優先の手抜き工事
交錯する人生模様
火災発覚!
炎との戦い
聳え立つ地獄の業火
阿鼻叫喚、続出する犠牲者
起死回生の鎮火作戦
結   末
高層建築という特異な存在
工法や材質
テロによるWTCビル崩壊
タウワリング

起死回生の鎮火作戦

  やっとのことでエレヴェイターを地上に降ろす作戦を終えたオハラハンが、作戦本部に戻ると、海軍士官から深刻な状況判断を伝えられた。 「最上階に炎が拡大するまでに、もはや18分しか残されていない。この時間内に救出しなければ、生存者はゼロとなるだろう」
  海軍の救難ティームとの検討の結果、グラスタウワーの設計図面から判断して、屋上階に設置されている給水タンクを爆破して、その大量の水をビル内に落下させれば、火災を鎮圧することができる可能性が高い、ということになった。
  ビルの構造設計、ことに最上階の天井梁と構造枠の強度からして、落下する水の奔流の圧力・衝撃に耐えうるだろう。であれば、壁や床で囲まれた空間を大量の水は奔走する。最上階に残された人びとの多くが落下・奔流する水と水流が運ぶ建材の破片や調度品によってなぎ倒され、押し潰されだろう。だが、300人のうち200人近くは救出できるだろう、という状況判断だった。
  しかし、爆薬を運び仕かける任務に赴く消防士も、その危険な最上階付近に残されるから、この任務は「決死の作戦」「無謀な挑戦」ともいえるものだった。

「こんな無謀な任務に赴く愚か者は、俺しかいないな」と、オハラハンは嘆息ともとれない呟きを残して、ふたたび用具とともヘリに乗り込んだ。
  さいわい、最上階にはこのビルの構造を知悉している設計士、ロバーツがいる。2人で協力すれば、この作戦に最適な爆薬の仕かけ場所を押さえることができる。オハラハンは、館内非常電話でロバーツに作戦を連絡しておいた。
  一方、絶望を目の前にした最上階の人びとのなかには、自分だけ助かりたいという欲望をむき出しにした者どもと、覚悟を決めて自己抑制をまっとうしようとする者たち、そのあいだに立ち竦んでいる大勢とに、色分けができていた。
  この点について、このハリウッド映画は、実にわかりやすい構図を描き出している。

  グラスタウワーの建設費を削るために手抜き工事を指導したロジャー・シモンズは、これまた「わが身大事」の化身みたいな人物設定になっていて、周囲の人間を押しのけても、自分だけは助かろうともがいていた。
  その彼が企んだのが、避難用ゴンドラの乗っ取りだった。
  戻ってきたゴンドラに飛びつき、人びとを振り払って奪い、乗り込んだ。同じような輩が2、3人、やはりゴンドラに取りすがった。そして、ゴンドラは、隣のビルの屋上に向かって下降し始めた。
  ゴンドラに取りすがった人びとは、下降の振動・揺れでみんな落下した。かろうじてゴンドラの縁に取りすがった数人の手足を、シモンズは自ら振り払ってその落下に手を貸した。1人だけゴンドラにとどまったシモンズが、勝利の快感に酔い始めたそのとき、爆風を受けて吊りワイヤーが切断され、ゴンドラは振り子のようにグラスタウワーに突っ込んでいった。

  さて、ロバーツはオハラハンの作戦伝達を受けて、138階の人びとに、屋上タンクの爆破の決行を伝えて、大量の水の奔流に備えて、柱などの頑丈な部材に身体を括りつけて、安全な姿勢をとるように警告した。そして、屋上に昇っていった。
  ヘリから耐火服に身を包んだオハラハンが耐火バッグを携えて屋上に降下した。
  2人は設置場所を打ち合わせながら、爆薬を仕かけていった。設置が完了した。3分後に爆発する設定にした。
  だが、非常階段にも炎は回っていて、ようやくのことで2人は138階にたどり着いた。すぐに柱や枠に身体を縛り付けた。部材を飲んだ激流はどこを走るかはわからない。運を天に任せるしかない。多くの人びとは、身体を縛り付け終わっていた。しかし、恐怖に負けて、身体を固定せずに逃げ場を探す人たちもいた。

  やがて爆破の時限。水槽のあちらこちらで爆薬が炸裂していった。タンクの破れ目から大量の水が噴出していった。その量は3800万リットル。だいたい、国際競技用の競泳プールの水の量くらいではなかろうか。
  燃え盛るグラスタウワーの最上階から下に向けて、滝や洪水のような奔流が、各階を渦巻くように落下していった。
  この場合、火災の鎮圧に役立つのは、奔流の圧力と風圧が、ビル内で微粒子となって酸素と激しく反応している物質を吹き飛ばし、酸素との結合(つまり燃焼)の条件を奪うということだ。もちろん、水そのものが、可燃物と酸素とのあいだを遮断する、熱を奪うという効果も大きい。

  奔流はビルの内装物や調度品をなぎ倒し、階段やエレヴェイター通路を伝って落下していった。そして、ガラス窓を突き破ってブルの外に落ちていった。
  最上階の人びとのうち何人かは、水が運んできた物体に押し潰されたり、打ちのめされたり、さらには水とともに窓から外に投げ出されたりして、命を奪われていった。身体を固定しなかった人びとは、次々にエレヴェイター通路や窓から叩き落されていった。
  数多くの犠牲者を出しながら、屋上水槽の爆破による鎮火作戦は「成功した」ようだ。大量の水がより下の階に流れ落ちるのにしたがって、火炎は押し消されていった。
  だが、グラスタウワーはその中層から上の大部分を火災によって破壊され、最後には巨大な水の奔流によって破砕された、聳える残骸廃墟となった。

前のページへ | 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済