超高層ビルの火災・燃焼災害という文脈では、2001年9月、アメリカでの一連のテロ事件は大きなインパクトをもたらした。航空機を乗っ取って世界貿易センター(WTC)に衝突させ、ビル火災との崩壊をもたらした事件だ。
本来、このビルは普通の旅客機が衝突した場合の打撃(物理的衝撃)にも耐えうる構造設計をうたわれていた。だが、大量の燃料を積んだジャンボジェット機を衝突させて、衝撃だけでなく、爆発と燃焼(ものすごい高温・熱エネルギーの災厄)を引き起こした場合には、ビルは比較的短時間で崩壊してしまう、という事実を人類に突きつけた。
あの現代テクノロジーの粋を集めて建築した超高層ビルが砂塵のように崩れ落ち、なおかつ火炎から遠ざかっていたであろう下層の階や隣接ビルもまた、この(高温の)砂塵や瓦礫の崩落によって、破壊され崩壊してしまったという事実だ。
高熱は在室の酸化や炭化などの化学変化をもたらすとともに、分子の振動の増幅拡大だから、長時間の高熱が材質の結晶や結合を緩め脆くしてしまうということが原因の1つかもしれない。
この出来事について、消防や建築工学、熱工学などからの検証報告はいまだに不十分で、どういうメカニズムがはたらいてそういう結果になったのか、因果連関は解明されていないという。
というのも、テロへのイデオロギー的=過剰反応で、事件後いち早く、あの廃物と瓦礫は除去され、新たな建築物の再建(「アメリカの意気込みを見せるぞ」というメッセイジを発信したかったからか)を急いだため、ビル崩壊の原因やメカニズム解析の証拠が保全されなかったためだという。
今後、高層ビル火災の場面を撮影するとすれば、数時間後に、ビルが砂塵のごとくに崩れ落ちるというシークェンスを入れなければならないだろう。
さて、この映画の題名になっている「タウワリング」だが、これは古くは教会や聖堂などの尖塔構築を意味したが、今では高層建築(工学・技術・建築物・思想)を意味する用語だという。
私は、この記事の副題を「高層地獄篇」とした。「タウワリング」を「高層建築」と即物的に訳したわけだが、それは、タウワーの動名詞から派生した、この高層建築(物)という意味に理解したからだ。
これについては、「タウワリング」を分詞形容詞として、「高く聳え立つところの」という意味合いに訳す方が好ましいかもしれない。この記事の原案試作をブログで公開したときに、そういう指摘コメントをいただいた。「聳え立つ地獄」の方が、文学的・詩的で上品な感じがする。映画作品の題名としては上等だと思う。
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