タワーリングインフェルノ 目次
原題
見どころ
あらすじ
言語の薀蓄
空からの登場
見栄え優先の手抜き工事
交錯する人生模様
火災発覚!
炎との戦い
聳え立つ地獄の業火
阿鼻叫喚、続出する犠牲者
起死回生の鎮火作戦
結   末
高層建築という特異な存在
工法や材質
テロによるWTCビル崩壊
タウワリング

工法や材質

  まず土台。たとえば東京湾岸では、高層ビルを建てる敷地には、ビルの底面形状全体に、一定の密度で巨大な杭、鉄筋コンクリート製で、厚さ10cm以上の太いペンシル型・先端円錐の円筒の杭=パイルを地下に打ち込む。東京湾のような軟弱な地層のところは、地下深くの花崗岩層よりもさらに深い玄武岩層まで打ち込む。
  大都市が多い臨海地帯では、通常、地下何千mにも達する深度まで、パイルをいくつも繋げて打ち込み続ける。大きなビルでは、こういう多数の杭の列や束の頭が石畳のように見えるだろう。
  こうして、高層ビルの地下には、地下数千mまで達する巨大な杭の束が地殻岩盤に打ち込まれていて、それが、タウワーの重みを支え、周囲の地殻の揺れ=地震による土台の破壊を防ごうとしている。
  とはいえ、地盤としてつながっている一帯の土地が揺れれば、高層ビルの土台を支える地盤も連動して揺れる。だから、振動を吸収する骨格構造になっている。とはいえ、基本的に高層建築は、振幅の大きい長周期の揺れには脆い構造をもつことになる。

  そのためには、地上から屋上まで鉄筋や壁面がきわめて正確に組み立てられなければ、揺れや衝撃を吸収するような仕組みはできない。だから、超高層ビルは、地上と屋上との寸法の誤差は、平屋の家屋よりもはるかに小さい(はずになっている)。
  そうなれば、土台から屋上まで、生コンクリート打設による工法は、絶対に採用できない。というのも、生コン・モルタルは打ち込み時の寸法が乾燥すると、少なくとも100分の1くらいの比率で縮んでしまうからだ。
  材質やセメントの量にもよるが、セメントと砂利、骨材などを混ぜたものに水を加えて練り込むことでモルタルができる。モルタルは乾燥するにつれて、化学反応による結晶の形成や水分抜けなどによって、収縮していくことになる。、
  1mで1cm以上、10mで10cm以上も狂いが出るわけだ。しかも、乾燥によって、モルタルの内部や表面には無数のヒビが入る。生コンは背が高く精密さが要求される建築物には、絶対的に用いることができない。そのため、強度や寸法の正確性が求められるコンクリート部分は、鉄骨や鉄筋、鋼網などを入れるのはもちろん、モルタルを流し込んでは乾燥させヒビを入れ、そこにまたモルタルを流し込むという作業を数回繰り返すことで建造することになる。それでも、寸法は設計図面と必ずかなりの誤差が出る。

  そこで、精密な設計施工を要する建築物には、プレキャスト・コンクリート材(基礎や土台部分)やプレファブリックの化学樹脂・軽金属のブロック、建材パネルなどが用いられる。しかし、プレキャスト(事前に工場などで打設・調整されているもの)でも、コンクリート部材は、カルシウムがカルシウムや周囲の骨材とイオン共有結合・化学結合をしているので、経年変化によって、必ず劣化していく。
  雨や雪、大気中の湿気などの水分の浸透で、カルシウム分が溶け出す。さらに、カルシウムイオン(金属性=アルカリイオン)の分離や骨材との化学結合・融合、さらに酸化還元反応で、確実に強度は低下していく。
  高温多雨の日本の東京では、当初品質・安全限界などは50年と維持できないという。継起的に補修・補強工事をおこない続けるしかない。
  もちろん、プレキャスト工程で、劣化防止薬品や表面塗工によって、水分の浸入や化学的劣化の予防は施すが、それも経年劣化を避けられない。

  というわけで、超高層建築では、建材の重量を減らすためにも、化学樹脂(グラスファイバー繊維)などを多用した建築部材=パネルやブロックを嵌め込み連結する工法が用いられる。
  現場で製造されるのは、鉄筋骨格とその保護・補強メカニズムだけで、それも事前に用意された部材を設計図どおり精密に組み立て、屋上ですら地上と数mmとな違わない。まさに設計図どおりに、精密に組み立てられる。そうでないと、用意された、部材がきちんと嵌まり込まないのだ。
  高層階の建築現場は、風などで常に揺れが続いているので、そういう揺れのなかで小さな誤差にとどめる工法技術は、まさに驚異的といっていい。

  それでも、骨格を成す鋼鉄もしょせん、酸化などの化学変化や品質劣化を免れない材料でしかない。とくに高温多湿の東京では、温度と水分による伸縮と劣化(物理的・化学的劣化)も避けられない。
  それでも、せいぜい3階建ての住宅などに比べて、超高層ビルは、けた違いに精密・正確に組み立てられた建築物である。しかも、土台は周囲の土地が陥没したり割れたりしても、地下大深度まで打ち込まれたパイルの束によって、結束=凝集が保たれるようにされている。
  それでも、地溝ができる(地殻を割る)ほどの断層形成(巨大地震)には対応できないのだが。そのときは、社会が滅びるから、高層ビルだけ生き残る意味はないともいえるが。
  だから、実際の超高層ビルでは、この映画のようなずさんな手抜き工事、欠陥品質はありえない・・・ことになっている。あくまで建前としては・・・

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