大誘拐  目次
見どころ
あらすじ
3人の「虹の童子」
おばあちゃん
おばあちゃんの山歩き
誘拐決行
おばあちゃん、3人の人柄を見抜く
驚きの隠れ家
刀自とクーちゃん
クーちゃんの心配
さて翌朝・・・
刀自とクーちゃん
さて翌朝・・・
乗っ取られた誘拐…身代金100億円
県警本部長、井狩
井狩の痛烈な反撃
虹の童子の反撃
警察の追跡網
奇襲作戦
刀自、テレビ中継に登場
山林資産の洗い直し
兄弟姉妹の結束
空のかなたに消えた100億円
刀自の帰還
井狩、刀自を訪なう
井狩、刀自に問いかける
おばあちゃん、「お国」に挑む
刀自の算段
3人の童子の旅立ち
正義の決断
平太の決意
健次の道
作品の奥にあるもの
天本英世のこと

おばあちゃん、3人の人柄を見抜く

  3人組は人里離れた山中でもう40日以上も、柳川家と刀自(おばあちゃん)を見張り続け、疲労困憊しているはずです。
  しかし、若い女性の紀美を残せという刀自の説得に耳を貸しました。道理や人情には柔軟に対応する「心」をもつ若者たちだと刀自は確信したようです。
  誘拐をするという点では志は低いが、目的のためにひたすら艱難辛苦を耐え忍ぶ忍耐力と強い意思、そして道義心、人の説得に耳を貸す寛容さを備えている、と。

  なにしろ、莫大な経営資産と家産を運営し、多数の従業員を率いる柳川とし子刀自は、紀州では指折りの財界有力者の1人です。
  これまでに、上は内外の経済界の有力者からはじまって、下は巨額の資産のおこぼれに与ろうとする詐欺まがいの「食わせ者」まで、刀自はさまざまな人物と渡り合ってきたのです。
  人の器量や才覚、誠実さ、反対に虚偽や詐術を見抜く目をもっているのです。その刀自の「心」に響く何かを、この「しょうもない若者ら」はもっていたようです。

  たしかにこの誘拐作戦のなかで、3人組は忍耐力だけでなく、自発性や自己犠牲の精神を身につけたようです。
  あの軽薄な平太は、変わっていました。

  和歌山市街にアジトにするために借りたアパートを長く留守にするのは、嫌疑を招く要因になるということで、週の半分以上、真夜中に、マークUで走ってアパートに行って夜を過ごし、明け方ふたたび見張り場所に戻るというスケジュールを守っていました。
  自ら率先して言い出したことで、その道のりは往復100km以上になり、山道が大半でした。寝不足は持ち場での仮眠で補っていました。

驚きの隠れ家

  さて、3人組は刀自にアイマスクで目隠しをして車に乗せ、山道を和歌山市方面に向かって走り出しました。
  そのとたん、刀自が問いかけました。
  「ひょっとしてアジトは和歌山市内やあらへんやろな…」と切り出し、井狩本部長率いる和歌山県警の捜査能力なら、和歌山市街の貸しアパートなんかは短時日に割り出してしまうはずだと断言しました。

  刀自の説明は説得力抜群です。
  行き先、逃げ場を失った3人組は、国道脇の空き地に車を乗り入れて止め、しばし考えあぐねました。
  そして、健次はなんと、誘拐した人質の刀自に自分たちの窮境を打ち明けて頼みました。
  「俺らの言うことに素直に従うという約束やから、隠れ家を世話してほしい。何とかならへんか、おばあちゃん」と申し込んだのです。

  「あてはないこともないんやがなあ…」と言いながら、刀自が3人組を連れて行ったのは、峠を越えて奈良県側のさらに山奥。
  一番近い集落からも8km以上も離れた山腹の斜面に建つ一軒家。日はとっぷりと暮れていました。
  この家にたった1人で住むのは、以前長年にわたって柳川家の女中頭を勤めていた中村くら(通称クーちゃん)。もう一昔も前に連れ合いを亡くしていました。

  刀自が3人を後ろに、その家の玄関で訪いを請うと、家のなかで物が衝突する大きな音がしたと思ったら、いきなり玄関の戸が開き、初老の女性が飛び出してきました。
  そして、刀自を見つけると、感涙に咽びながらすがりつきました。
  くらは、刀自を神様以上に尊敬し慕っていました。刀自を心から慕う、腹のすわった力持ちのクーちゃんを演じるのは、芸達者の樹木希林。

  かくして、山里の一軒家を隠れ家とする、くら、刀自、そして3人組の奇妙な生活が始まったのです。
  3人組はサングラスと白マスクで顔を隠して、刀自とクーちゃんに人相を見せないようにしています。クーちゃんは、サングラスのマスクという怪しい風体の3人が刀自の配下で忍者ではないか、刀自は何やらもくろみがあって、こんな山中にやって来たのだろうと思ったのでした。

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