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■負け犬を叩いたつもりが、狼を怒らせた■
『シューター 極大射程』は映画作品としては、アメリカ国外ではあまり成功しなかったようだが、超長射程狙撃のすごさを見せてくれた作品。そして、アメリカ軍産複合体の一部門がときおり暴走して、自派の利害のために謀略と暗殺を企てることもあるという傾向を描き出した。
策謀の首謀者は――たぶんCIAと結びついた――軍の海外情報部のなかの汚れ仕事専門の部門。そういう状況設定はあながち単なる空想ではなく、歴史的な根拠=事実がある。
1960〜70年代には、ペンタゴンの裏部門が、南米の左翼勢力の弾圧・封じ込めや、クーデタによる気に入らない政府の転覆、右翼軍事独裁政権の樹立などを画策して、大半を成功させてきた。⇒参考記事@『ミッシング』/A『ミッシング』の地政学的分析
事件当時には、おおむねハリウッドはこの問題を避けて通っていた。
やがて性懲りもなく、「デルタフォースもの」を制作した。
そういう――軍産複合体に尾を振るような――傾向に比べれば、この作品は、ごくまっとうな態度だと思う。
さて、ペンタゴンのある裏部門のいくつかは、アメリカ系多国籍企業などと結託して、その海外権益・利権の拡張・促進の「お先棒担ぎ」をしていたらしい。そして多額の報酬を獲得し、その資金力にものを言わせて、政府・軍組織のなかでの隠然たる発言力や地位を手に入れてきたようだ。
『シューター』の物語に登場する裏部門は、アメリカの多国籍石油巨大企業と癒着して、エティオピアで大量殺戮をおこなった。パイプラインの敷設経路をめぐって石油会社と対立していた現地の村落住民を皆殺しにしてしまったのだ。しかも、CIAの現地管幹部を利用して、この謀略を、あろうことか国連の「平和形成活動」に偽装して、アメリカ海兵隊の精鋭を騙して利用し、見殺し、いや意図的な殺戮を狙ったのだ。
軍の秘密組織は、CIAの現地幹部の指揮下に置きながら狙撃兵ボブ・リー・スワガーと観測手をエティオピア高原に送り込み、エティオピア政府軍をゲリラと思わせて狙撃させた。政府軍は、村民虐殺の情報を受けて、その虐殺実行部隊を攻撃するために、移動していたらしい。それをボブらに反政府ゲリラと思い込ませて、攻撃させたのだ。
そのうえで、この謀略の証拠を完全に消すために、ボブと観測手を見殺しにしたうえに、この2人を殺すためにアメリカ製のヘリを謀略組織に提供していた――あるいは操縦手もアメリカの軍人だったかも。ボブの相棒の観測手は殺されてしまった。
1人生還したボブは、この同胞の兵員に対する裏切り・見殺しを調べようともしない軍やCIAの冷酷な態度に幻滅して退役して、モンタナの山中深くに隠遁してしまった。