コントラクター 目次
暗殺者の孤独
原題について
見どころ
あらすじ
暗殺――最後の任務
狂った手順
孤独な少女エミリー
コリンズの策謀
空港での対決
冤  罪
ふたたび間一髪
モールでの戦い
別れと再会
背景にある問題について
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諜報機関の物語
ボーン・アイデンティティ
コンドル

暗殺者の孤独

  この作品は『ザ・シューター』という邦題で2007年に公開され、その後DVD販売されてきた。だが、この邦題のつけ方にはかなり問題を含んでいる。
  日本の洋画配給業界における邦題のつけ方については、私としては以前から、きわめて深刻な問題を抱えていると感じている。そのために、このサイトでは原題や原作について重視しているのだが。
  日本の洋画業界では、観客動員(売上)をあまりに優先するため、題名のオリジナリティや含意について配慮を欠いたままのあまりに安易な題名づけが横行してきた。ここまで国際化が進み、大都市のディスプレイに横文字表記が激増した状況なのに。
  つまり、国際化にも対応できず、映画作品のオリジナリティへの配慮もないという体たらくなわけだ。
  そこで、ここでは――私が勝手につけた――『ザ・シューター コントラクター』という仮題で取り上げることにする。

原題について

  原題は The Contractor 。日本語にすると「請負契約者」ということになるが、請け負ったのはこ狙撃による殺害だから「暗殺請負人」となる。コントラクトは「契約」という意味だが、もともとは仕事の委託=受託に関する合意契約ということだ。コントラクターとは受託契約者つまり請負人という意味だ。
  アメリカではコントラクトには裏社会の業界用語として「暗殺請け負い」という意味があるらしい。だから、コントラクターは「殺し屋」ということになるのかもしれない。
  この映画で描かれるのは、狙撃による暗殺を請け負ったウェズリー・スナイプス演じるエイジェントの物語だ。
  「ザ・シューター」では、この辺りの含意が失われた平板な題名になってしまう。洋画配給会社の題名設定の担当者たちのセンスのなさを如実に物語る邦題ではないか。

見どころ
  この作品の主眼は、暗殺=狙撃そのものにいたる経緯や手口ではない。脱出経路の模索と「発注者としてのCIA」側の裏切りへのエイジェントの反撃を描いた物語だ。
  暗殺を請け負ったフリーランスのエイジェント、ジェイムズ・ジャクスン・ダイアルは狙撃と逃走の手順が狂ったことから、標的は葬り去ったものの重傷を負い逃亡経路を封じられてしまった。彼は逃亡の過程で逃げ込んだアパートメント――暗殺の手引き・支援者の住居――で偶然に隣室に住む少女と出会い、信頼関係=友情を築くことになる。
  ジェイムズも孤立して追い込まれていたが、少女もまた社会で孤立し追い込まれていた。
  少女は祖母と2人暮らし。彼女は、両親の死亡事故による心的障害から、学校も含めて周囲との関係を断ち切ってしまったのだ。自らが陥っていたトラウマからの脱出を求めて、少女はスナイパーを信頼し手助けする。

  他方で、ロンドン警視庁は狙撃犯追及の包囲網が敷いた。ジェイムズが暗殺したのは、アラブ人のテロリストで、ブリテン当局に逮捕されて刑事裁判を待つ身だった。その男はじつはCIAが国際的謀略のために秘密裏に育成した暗殺者だった。
  CIAの幹部は、殺されたテロリストをかつて支援・育成した過去を葬り去るため、ジェイムズを送り込んだのだ。だが、逃走手順が狂うと、ジェイムズの抹殺を謀った。
  CIAエイジェントたちはジェイムズ襲撃にさいして、この暗殺事件を捜査するロンドン警視庁の警視を射殺した。CIAの工作でジェイムズにはすべての殺人の罪がかぶせられた。そして、事件の捜査ははからずも、警視の娘である捜査官が引き継ぐことになった。
  かくしてジェイムズは、任務以外の殺人の冤罪を晴らすとともに逃亡経路を切り開くための、戦いを始めることになった。
  というわけで、この作品の見どころは、狙撃までの経緯ではなく、準備した手順が破綻するという状況のなかでどうにか狙撃を成功させたが、逃走経路を封じられたスナイパーの脱出のための戦いが主題となっている。
  狙撃ののちの息詰まる心理戦、策謀の駆け引きが展開する。

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