さて、ある夜更け、ニューオーリンズの街中。
ダービー・ショーとトーマス・キャラハンが深夜までレストランで飲み食いしていた。キャラハンの深酒にダービーが付き合ったのだ。キャラハンは、ローゼンバーグの伝記――論文業績屋経歴を時系列でたどるはずのもの――を書き始めたが、挫折してしまったので、やけ酒気味だった。
ようやく腰を上げて帰宅することになった。
ダービーはキャラハンから車のキイを受け取ろうとしたが、悪酔いしているキャラハンは自分で運転するつもりで、渡さなかった。で、ダービーは、それなら、自分は歩いて帰ると言い張り、歩き始めた。
そのとき、車に乗り込んだキャラハンはキイを回したが、エンジンはかからなかった。セルの空回りの音が続いた。様子がおかしいので、ダービーが振り向いて車に戻ろうとしたとき、車に仕掛けられていた爆薬が炸裂した。爆発は燃料の爆発をも誘導して、一瞬で車は吹き飛んだ。
すぐに救急隊と警察が駆けつけて、ダービーは保護された。
彼女が警察車で震えていると、ニューオーリンズ警察の警官だと名乗る男2人が、声をかけてきた。しかし、婦人警官が近づくと、去っていった。そして、別の刑事が来て、ダービーがいましがた質問しようとした警官の名を告げると、「そんな名前の警官はいない」と返答した。
「ここにも、暗殺者と闇の組織の手が回っている」とダービーは気がついた。
そこで、用心をして、連れていかれた病院を抜け出して、街中のホテルに泊まることにした。
ダービーは追跡者たちを巻くために、ロースクールの女友達を呼び出して、「ダービーはデインバーの叔母のところにしばらく滞在する」という情報を流してもらった。こうして、キャラハンの葬儀にも参列しないで、自分を探る者どもの動向調べることにした。だが、街中にも、彼女を捕らえようとする罠が仕かけられていた。
しかし、どうにか罠をすり抜けてホテルに逃げ帰ることができた。というのは、ニューオーリンズのカーニヴァルの時季で、街中には群衆が溢れかえっていたからだった。
ダービーは、ヴァヒークに電話した。翌日、遊園地で落ち合い、FBIに証人保護の手続きを取ってもらうことになった。ところが、ヴァヒークの部屋には盗聴器が仕かけられていた。電話の会話がカーメルに筒抜けになってしまった。
カーメルはその夜、ヴァヒークを殺して、彼にすり替わり、遊園地でダービーと出会う算段を取った。
翌朝、ダービーはカーメル扮するヴァヒークと落ち合った。カーメルはシャツの下にサイレンサー付きの銃を隠して、ダービーの隙を突いて殺すつもりだった。だが、銃撃の直前、カーメルは、待機していた別のFBI要員によって頭を撃ち抜かれた。
だが、その男はダービーを保護せずに消えた。そのへんの事情は、私にはまったく不明だ。ヴァヒークの死を知って、とりあえずの対策を取っただけなのか。あるいは長官特命の隠密捜査官で、殺し屋を殺すことだけが仕事だったのか。
ともあれ、ダービーはヴァヒーク本人が殺されたと思って、パニックに陥った。