ジャーナリスト志望のアンディは失望する。というのも、アンディは、本音のところでは、流行ファッションの情報を追いかける同年代の女性たちを軽佻浮薄だと軽く見ていたからだ。
とはいえ、これも駆け出し時代の修行と割り切って、ミランダの意向を先取りした助手ぶりを発揮する。
というのも、本来の編集 editing とは、どのような対象読者にどのような情報内容を伝達するかという目標を明確にイメイジしなければならない仕事だからだ。つまり、その世界の話題論争のテーマをつかみ、独自の立場から立論し、読者を説得するアイディアをもたなければならないのだ。編集の仕事の核心はマーケティングなのだ。
その結果、アンディはミランダのお気に入りとなり、普段の服装も 《ランウェイ》 の制作陣すなわちミランダの腹案にふさわしいファッショナブルで最先端のものへと変化する。
《ランウェイ》 に勤務したがる女性たちのほとんどは、カリスマ独裁編集長が発案するユニークな服装を誰よりも先に目にして、模倣するための機会を与えられることに憧れているのだ。つまり、《ランウェイ》 で働いていれば、世界で最先端に洗練された服装をまとう女性のファッション・センスを獲得できるのだ。
けれども、そういうアンディの変貌(成長?)ぶりに対して、恋人のネイトは「以前は君が軽蔑していたファッション界の風潮に染まってしまった」と批判をぶつけた。それが原因で2人はけんか別れすることになった。
ミランダの信頼を得たアンディは、パリのファッション・ショウ――パリコレへの出展だろうか?――にアシスタントとして同行することになった。だが、先輩同僚のエミリーがパリのファッション・ショウでミランダをアシストするのが長年の夢だったことを知って、複雑な気持ちになった。パリコレに出展者側での参加というのは、ファッションに関心のある女性の憧れらしい。
ところが、書籍や雑誌の本格的な出版編集のプロになりたいアンディとしては、パリコレが「何ぼのもんじゃい」と冷ややかに見ているので、エミリーを出し抜き傷つけても行きたいとは思わないのだ。
仕事に対する見方も変わっていった。
ミランダは、最新流行を企画提案するために凄まじい努力や研究をしている。まさに身体を張り骨身を削ってアイディアを絞り企画を立ち上げ、ファッションをリードするオピニオンを打ち出していることがわかった。カリスマであり続けるために、通常人では耐えられないような努力と準備をしているのだと。