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メーガンの病状を知ったデイヴィは、落ち込み、自分を責めた。
母が自殺した日の朝、デイヴィは小学校の校長からの電話で「母が死んだので休む」と嘘を言った。嘘の後ろめたさ、後悔の念が、母の死についての責任を自分に科そうとしてさせたのだ。
「嘘をついたことへの天罰として、神様は母を死なせてしまった。今度はメーガンを死なせようとしている。ぼくが悪いんだ。嘘をついたから」
デイヴィは思いのたけをトムに吐露した。
心理学によれば、多くの人は、身近な人の死について納得がいかないとき、自分を責める理由をむりやり探し出してくるものだという。デイヴィの場合もそれかもしれない。
デイヴィは、トムの腕のなかで、自分を責める言葉を吐き出し続けた。
トムはデイヴィを落ち着かせるために、説明した。
「デイヴィ、メーガンの病気については、君の責任はない。だって、君が嘘をつく前から、そして君がここに来る前から、メーガンは末期癌に侵されていたんだ。気を落ち着けるんだ、いいかい」
トムの力強い説得でデイヴィは落ち着きを取り戻した。
やがてメーガンが力尽きる日が来た。
その朝、メーガンは顔色が良く、意識もはっきりしていた。メーガンはデイヴィやトムと話したがった。まず、デイヴィがベッドも傍らに行った。
「デイヴィ、あなとにもっと早く会えたらよかったのに。でも、あなたに会えて幸せだった。あなたは、私の可愛い息子だわ。私は、こんな可愛い息子を持つことができた。だから、これからずっと長くあなたの世話ができないのが、すごく心残りよ…」
デイヴィは、礼儀正しくお礼を言った。それがデイヴィらしさなのだろう。
代わってトムがメーガンの枕元に来た。
「トム、お願い約束して。デイヴィを本当の私たちの息子にすると」とメーガンは遺言を伝えた。
「必ずそうする」と返答しながら、トムはメーガンを抱きしめた。だが、その途端にメーガンは目をつぶり、息を引き取った。トムはいつまでも、メーガンを抱きしめていた。