ところが、その一帯の開拓小農民たちと大地主、ライカー兄弟との対立はどんどん深刻になっていった。
ライカーの圧迫を怖れる農民たちはジョウのもとに結束して、大地主の横暴に非暴力で対抗しようとする。小農民たちの結集に脅威を感じたライカーは、名うての殺し屋ガンマン、ジャック・ウィルスンを雇い入れて、農民の住宅に放火したり、農場を蹂躙したりし、さらに挑発して農民を決闘に駆り立てて殺害していった。
農民たちはひとり、またひとりと殺され、あるいは暴力を恐れて開拓地を離れていく。
小農民たちの指導者となっているジョウにも脅威が迫ろうとしていた。
事態を静観できなくなったシェインは、心を通わせた農民家族を守るために、ふたたびガンファイターに戻る決意をした。それはまた、殺伐たるガンマンの世界に戻ることを意味した。
ジョウを町に誘い出して殺そうとするライカー一味に、シェインは単独で挑んでいく。そして、死闘の末にライカー兄弟もジャック・ウィルスンも葬り去った。だが、シェインもどこか傷ついたようだった。画面では、少し血が飛び散っただけで、どこを傷めたかは描かれない。
銃撃戦は真夜中から未明にいたる時間帯におこなわれた。闘いが終わると、暁闇がしだいに薄らいでいく。
空が白み始める頃、銃撃戦に決着をつけたシェインは、静かに馬に乗って去っていく。
夜半にシェインの動きの異変に気づいたジョウイ少年だけが、馬に乗って出かけるシェインの跡を追いかけ、物陰に隠れながら、町での孤独な闘争と旅立ちを見ていた。
荒野に馬の頭を向けたシェインが町外れにやって来ると、ジョウイがシェインの背中に声をかける。
「シェイン、戻って来てよ! Shane, come back ! 」という少年の声が響くエンディング。往年の映画ファンのあいだでは大変有名なシーンと台詞だ。
ワイミング州の大平原の彼方に聳える冠雪の山岳連峰を背景に、シェインに向かって叫ぶ少年の姿と、少年の声を背中に馬を進ませるシェインの姿、そのシーンは実に美しい。
私は45年ほど前(1970年代はじめ)に英語版の脚本のノヴェライズ版を読んだのだが、それによると、
シェインの本名は、シャノン――アイリッシュ系の名前――というらしい、とジョウイはやがて知ることになる。そして、シャノンが西部では有名なガンファイターだということも。