ザ・シューター/極大射程 目次
NSAの暴走
原題について
見どころ
あらすじ
大統領狙撃事件
ボブ・リー・スワガー
PKOでの「見殺し」
狙撃場所の調査
周到な罠
狙撃のサイエンス
  地表の弾道学
  身体的・精神的条件
包囲網からの脱出
反撃への準備
  ニコラス・メンフィス
  スーパー・ガンマニア
罠の仕かけ合い
真相:軍部の闇の副業
夏の雪原での闘い
  FBI介入への仕かけ
  雪原の狙撃戦
軍産複合体のビジネス
ボブの無実の証明
報復 乱暴な結末だが…
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炎のランナー
諜報機関の物語
ボーン・アイデンティティ
コンドル

軍産複合体のビジネス

  日本向けヴァージョンでは描かれていないが、こののち、FBIと司法省は、ジョンスン大佐がかかわったと見られる一連の事件――エティオピアでの虐殺、フィラデルフィアでの大司教暗殺、リンチバーグでの傭兵戦など――を捜査・検証した。そして、状況証拠や伝聞証拠は、一連の事件の首謀者はジョンスン大佐であることを指し示していた。だが、直接的証拠、物的証拠は系統的に消し去られていた。

  そこで、司法省とFBIはペンタゴンにジョンスン大佐について質問状を送りつけた。返答は、退役大佐ジョンスンの身元と人物は国防総省が保証する、だが、民間軍事顧問会社をつうじておこなったことについては関知しない、ただし、この問題に関しては合衆国の安全保障にかかわる問題を含むので、これ以上の詮索は無用に願いたい、というものだった。
  つまり、ペンタゴンはアメリカの安全保障と権益保護のために、ジョンスン大佐が経営する組織をつうじて、非公式の活動をおこなわせているということだ。そのために、外交経路の手配や武器や資金の供与などの後ろ盾になっている。ただし、軍の直接の指揮管理下にはないことなので、活動の結果については公式上は関知しない。そして、ジョンスンはペンタゴンの管轄権限による保護下に置く、というわけだ。

  そして、これはアメリカの軍事政策と外交に関する問題なので、司法省とFBIには管轄権はない。手を出すな。ということだ。
  もちろん、ミーチャム元老院議員は、議員特権の厚い壁に防護されて、直接証拠が何もない事件への関与を問いただされることもなかった。


  政府機関としてのアメリカ軍(国防総省やCIA)がじかに手を出すと国際法上大問題になったり、あるいは国内世論の強い批判を浴びそうな事案には、ペンタゴンやCIAが操り糸を引く民間軍事会社や警備会社に事業を下請けに出して作戦を展開させるという手法は、国家陰謀(国営事業)の「民営化」といわれる。
  最近の例ではイラク戦争の後始末がある。フセイン政権を倒したのち戦乱がイラク全土に広がって手がつけられなくなった。アメリカ国内の強い批判を浴びてアメリカ政権は正規軍をイラクから撤退させたのちに、アメリカの権益や影響力を維持するための組織や装置の軍事的防衛を、アメリカの民間軍事会社や警備会社に委託した。
  だが、そういう企業の経営陣や現場の管理職層はペンタゴンと直接つながっている。表向きは政府官職から離脱させてそういう会社の経営陣に軍幹部を送り込み、現場の指揮官には名目上退役させた士官を派遣する。そして、企業の事業の現場(戦場)に派遣される人員は、これまた大多数が退役兵士または軍での訓練を受けたメンバーだ。

  こういう企業に支払われる報酬は、機密費扱いの軍事予算などだから、高額でものすごく収益性が高い。そして、供給される装甲車や銃砲などの兵器もまた軍部関連メイカーから高性能のものが支給される。巨額の国家予算を軍産複合体傘下の人員や企業群のあいだで分配・たらい回しにする仕組みになっているわけだ。
  アメリカの平和パクスアメリカーナはそういう権益・利権の構造を中核に置いて運営されているわけだ。そういう権力や権益の最優位を維持するために、愛国心やアメリカの安全保障という言葉が都合よく利用されるわけだ。そしてそういう言葉に鼓舞された若者たちが戦場に送られ、命の危険に直面させられている。
  そういう作戦や事業を企画立案しているのは、快適なオフィスで勤務し高給特権的地位を得ているエリート層なのだ。

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