だが、政府の秘密情報部は表向きは紳士然として交渉に乗ってきたのに比べ、犯罪組織はいきなり剥き出しの暴力で襲いかかってきた。
ルウ・ヴォーゲルは、ファミリーや腐敗経験パイクの情報網をつうじてたちまち、銀行強盗団がテリーたちのグループだと割り出した。そして、まず銀行襲撃の仲間デイヴを捕えて、赤い革表紙の帳簿について問い詰めた。デイヴは最初のうちは銀行襲撃自体についてもしらを切っていたが、残虐な拷問を受けて、自分たちが地下金庫強奪を実行したことを認め、メンバーの名前を白状した。
ルウは、テリーを交渉に引き出すために、次にテリーの自動車販売会社の従業員エディーを捕えた。
エディが拉致されたファミリーの事務所の一室には、ひどい拷問で傷だらけになったデイヴが椅子に縛りつけられていた。それを見ただけで、エディは震え上がってしまった。
人質を手に入れたルウはテリーに電話を入れた。
「強奪した貸金庫ボックスのなかに赤い革表紙の帳簿があったはずだ。人質の2人を返してほしいのなら、その帳簿を返せ」というのが、ヴォーゲルの要求だった。
だが、テリーたちは金銀財宝が目当てだったから、王女とS&M館の写真を除く書類などは、ヴァンのなかに放置してあった。だから、テリーにはファミリーの求める裏帳簿については、心当たりがなかった。
「そんなものは知らん」と言って突っぱねた。
すると、ファミリーはデイヴを電話に出して、どれほど酷い拷問を加えられたかを言わせた。それでも、テリーが裏帳簿を見たことがないと言い張ると、デイヴの頭部に銃弾を撃ち込んで殺害した。
テリーの耳に次に電話から聞こえた声は、怯え切って泣き叫ぶエディのものだった。
こうして、テリーをたっぷり脅してからルウは、再度要求を伝えた。
「もう1人の若造を生きたまま取り返したかったら、とにかく帳簿を探し出せ」と。
テリーはケヴィンとともにヴァンのなかの書類の山を調べ直した。すると、ルウが言っていた赤い革表紙の帳簿が見つかった。帳簿の中身を読むと、日付ごとに買収した警官たちの名前と金額が克明に記されていた。これまた「虎の尾」を踏みつけてしまったのだ。
ルウ・ヴォーゲルのファミリーと警察組織の癒着の証拠を盗んでしまったわけだ。
こうしてテリーたちは、MIに加えて、腐敗警官グループと売春マフィアに追われて命を狙われる羽目に陥った。