小説家を見つけたら 目次
原題と原作について
見どころ
あらすじ
ジャマールの日常
ヘッドハンティング
隠棲する偏屈老人
侵   入
謝 罪 文
スカウトの申し出
超名門校、メイラー・キャロウ
ジャマールとフォレスター
名門高校での生活
フォレスターとクローフォード
文章技術の訓練
ふたたびの情熱
ティームのライヴァル
クレアの接近
偏見と嫉視
窮   地
孤独な戦いと友情
外したフリースロー
「信義を全うする時季」
最後の旅立ち

ジャマールの日常

  ジャマール・ウォリス少年はアフリカ系の16歳。ブロンクス生まれのブロンクス育ち。母と兄との3人家族。先頃、病身の祖父がなくなり、父親は麻薬中毒になったあげく、家族を残して失踪した。
  兄テレルは、高校時代には優秀なバスケットボール選手で、スカウトされてプロリーグに入ったものの、傷害のためティームを去り、いまはニューヨーク市内のヤンキー・ステイディアムの駐車場管理係を務めている。弟想いの利発な青年で、どうやらラップミュージックの世界に挑戦しようとしているらしい。
  ジャマールの母親ジョイスは働き者で、明るく知的な女性。だが、夫が失踪してから、息子たちの将来を心配しながら、必死に稼いで家族の生活を支えている。

  ジャマールは、黒人が圧倒的多数派を占める地元地区の高校に通っている。が、授業には身が入らない。高校の授業で教えることは退屈で、自分の人生には役に立ちそうもないと考えているから、学科の勉強に時間を費やすことはほとんどない。だから、成績は「中の中」。
  その代わり、図書館で文学や哲学、歴史、社会評論などの書籍を借りてきて読み漁っている。しかも、熱心にメモやをとり、その感想や評価、考察などを丹念に小さなノートに書き込んでいる。高校生というよりも、大学生のような学習スタイルといえるだろう。
  黒人居住区の貧しい片親家庭の子どもだが、飛び抜けた知性の持ち主だ。その知識の深さと広さには、高校の担任教師が大いに注目している。


  他方、ジャマールは、近隣地区の仲間に溶け込み、また将来の職業の夢のために、バスケットボールに打ち込んでいる。持ち前の俊敏さや運動能力もさることながら、頭の良さ(知識や観察力、戦術眼や読みの深さ)を活用してプレイし、バスケット選手としてもひときわ高い力量を備えている。
  休日の余暇や週日の放課後には、近所のバスケットコート・パーク(空き地をネットフェンスで囲んで、1基のバスケットゴールを設置してある場所)で近所の仲間たちと、練習ゲイムに熱中している。
  というわけで、バックパックとボール(バスケット用)がジャマールの日常の携行品アイテムだ。たいての時間、少なくとも片手はボールに触れている。だから、バスケットボールをまるで自分の体の一部のように巧みに、自由に操る。

  その日もジャマールは、仲間たちと空き地でバスケットボールを楽しんでいた。ゲイムの合間に、仲間の1人が、コートのすぐそばの建物の2階の窓を見上げた。それは古い共同住宅2階のコーナーにある部屋の窓で、空き地に面していて、ジャマールたちが遊ぶ光景を見下ろすことができる。
  少年たちがパークにいるときは、その窓はいつも開いていて、ときおり、カーテンの隙間からだれかが外を覗いているような気配がある。噂によれば、住人は老人で、部屋の外には一歩も出ない偏屈者らしい。少年たちは、興味本位に面白おかしく、「逃亡凶悪犯」だとか「連続殺人鬼」だなどと好き勝手にその老人の「正体」を思い描いていた。

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