小説家を見つけたら 目次
原題と原作について
見どころ
あらすじ
ジャマールの日常
ヘッドハンティング
隠棲する偏屈老人
侵   入
謝 罪 文
スカウトの申し出
超名門校、メイラー・キャロウ
ジャマールとフォレスター
名門高校での生活
フォレスターとクローフォード
文章技術の訓練
ふたたびの情熱
ティームのライヴァル
クレアの接近
偏見と嫉視
窮   地
孤独な戦いと友情
外したフリースロー
「信義を全うする時季」
最後の旅立ち

文章技術の訓練

  さて、ジャマールはフォレスターから文章作成の指導を受けることになった。フォレスターは、ジャマールに机上のタイプライターを1台貸し与えた。そして、隣の部屋からもう1台をもって来て、ジャマールと向かい合わせの机に置いた。マン・トゥー・マンの指導だ。
  フォレスターは、まずはじめに考えずに感じるままにキーを叩けと言った。だが、ジャマールはすぐに文章を思い浮かべることはできなかった。プロフェショナルとアマチュアの差だ。
  戸惑うジャマールに、フォレスターはお手本をやってみせた。
「最初の回は、ハートでキーボードを打つんだ。2度目(推敲)は、頭で考えながら再構成するんだ」
  と言って、またたくまに1枚(A4)の文章を打ち上げた。それをジャマールに見せた。
  文章を読んだジャマールは、「ああ、何てすごいんだ( Aha, Jesus Christ ! )」と嘆息した。一瞬に思いついて書き上げた文章とは思えないほど、すばらしかった。というよりも、自分にはとてもおよびそうもない境地だと委縮するほどに。


  ジャマールのそんな態度に、フォレスターは、文章の構想をスパークさせる触媒が必要なのだと気がついた。インスピレイションによって文章を書き始めるきっかけをつかめないジャマール。記憶とか論理が、文章への衝動よりも強い人たちにありがちな傾向だ。
  フォレスターは、過去に執筆した原稿のなかから、「信義を全うする時季( The Season of Faith Perfection )」という作品をジャマールに手渡した。模倣してはならないが、読んで浮かんだ発想の赴くままに文章を書き上げろ、というのだ。
  こうして、ジャマールが書き上げた文章を読んだフォレスターは、「すばらしい( remarkable ! )とつぶやいた。
  卓越した指導者=助言者を得たジャマールは、短期間に飛躍的な進歩を遂げた。フォレスターとしてみれば、対等に会話できる年若い友人=仲間を得た想いだった。

前のページへ | 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済