ミシシッピ・バーニング 目次
アメリカ深南部の悲劇
原題と原作
見どころ
あらすじ
深南部の悲劇
プロテスタントの実態
公民権運動メンバーの失踪
分断され孤立させられる有色人種
憎悪と暴力の増幅
人種差別と対立の構図
突 破 口
捜査と「対抗暴力」
実際の事件と社会的背景
事件の捜査と裁判
最近の事件の問題性

人種差別と対立の構図

  ところで、湖沼の捜索に動員されたのは、州兵ではなく、連邦海軍(若年予備隊)だった。このことは、人種差別をめぐる地方と中央政府、つまり深南部ミシシッピ州と北部諸州とのあいだの対立の深さを表している。FBIは、地元の利害としがらみにとらわれた州政府組織では、この問題に対して厳正に対処できないと判断したのだ。

  当然のことながら、地元の保守派や地方ボス、KKKメンバーは、州の権力を飛び越えて(北部が優越する)連邦権力が投入されたことに対して、強い反発を示すことになった。差別主義者の威嚇や示威行動もエスカレイトしていった。地方ボス(KKK)は、人びとをデモンストレイシヨンに動員した。
  保安官たちは、このデモを黙認どころか支援していた。
  ティルマン町長も、集会やメディアの前で、「外部の権力の不当な介入」「町の正当な自由権の侵害」を訴えて、FBIや軍の介入を強く非難した。
  町のボスや顔役の圧力を受けて、FRIに部屋を貸しているホテルの支配人が、彼らに立ち退きを要求した。すると、アランは連邦政府の命令としてホテルを接収し、大金をはたいてそっくり買い取ってしまった。
  FBIも、意地と面子にかけて後には退かないという意思表示だ。


  事態が紛糾の度合いを深めると、合衆国の主要マスメディアがこの事件に注目し、捜査・捜索活動とともに、地元の民衆の意見や立場を取材報道した。深南部の人種差別をめぐる意識状況などが全米に報道された。
  黒人差別は当然のしきたりと思い込んでいる白人が多数派だが、少数ながら差別に戸惑ったり不快感を感じたりする人びともいる。黒人たちは取材への返答を拒否ないし無視する。
  差別を当たり前と感じる人びとは多数派とはいえ、自ら積極的に黒人への圧迫や抑圧、暴力に直接関与する者は、きわめて少数だ。しかし、このわずかな少数派が、狂信的な価値観で強固に結集して(背後で町の有力者の黙認や支援を受けて)、凶悪な暴力を振りかざすのだ。行政と結託した暴力装置になっているのだ。

  ところが、多数の兵員による懸命の捜索にもかかわらず、失踪した3人(の遺体)は発見されなかった。しかし、沼の底から3人が乗っていた乗用車が発見され、引き上げられた。これによって、状況証拠にすぎないが、3人が殺害され遺体が隠されたという蓋然性が高まった。
  しかし、被害者の遺体が確認されなければ、殺害事件としての提訴・訴追はできない。
  とはいえ、この間の行動(デモの扇動や威嚇行動など)から、この地方のKKKの影の首領=首謀者は実業家のクレイトン・タウンリーで、その指揮下に保安官補のヒル、居酒屋の店主のフランク・ベイリーとその配下の若者たちであることが、ほぼ確認された。
  だが、あくまで憶測、推定にすぎない。
  遺体を捜し出すこと、この殺人事件の事件に関与した人物を特定する情報や証拠を手に入れること、これがアランとアンダースンの課題となった。

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