ウォーキング with モンスターズ 目次
恐竜よりも古い動物たち
見どころ
古生代カンブリア紀
身体の形状と構造
シルル紀
内陸河川への進出
デヴォン紀
石 炭 紀
ペルム紀
①ペルム紀初期
プレデターの産卵・孵化
②ペルム紀晩期
砂漠での生存競争
古生代の終焉
ペルム紀から中生代三畳紀へ
恐竜類の時代へ
「大量絶滅」の古生物学
大量絶滅の痕跡の年代記
大量絶滅の主要な原因

地質年代図を見る

②ペルム紀晩期(後期)

  約2憶5000万年前。場所はシベリア。
  爬虫類は大きく進化したが、その間に、生物の生存環境はひどく過酷になった。  地球のプレイトの運動形態が構造転換し、大陸地殻がまとまり、1つの巨大な汎大陸=パンガエア( Pangaea )が形成された。パンは「普遍的」「巨大な1つのまとまり=全体」、ガエアとは「大陸」「陸地」「地球=大地」という意味。

  一続きになった大陸地殻の内部でプレイトの衝突やマントル対流プルーム(大噴出)が起きるので、この超大陸のいたるところで大規模で活発な火山活動、造山活動が展開していく。ことに火山活動は、地表に莫大な量の熱それ自体をもたらしただけでなく、大気の温室効果ガス=二酸化炭素を大量に放出した。
  こうして急速な温暖化が進んだ。そのため、気温は現在よりも60%も高い状態になった。ことに大陸内部、内陸部(つまり、海洋から離れた、この大陸のほとんどの領域)では、恐ろしいほどに乾燥化=砂漠化が進展した。

  爬虫類は、より熱効率が高く、代謝機能が活発な動物へと進化した。まだ変温動物としての本質は変わらなかったが、常時活発な活動を可能にする体温を維持できるようになった(気温が高いせいもあるが)。このような進化を遂げた爬虫類を、古生物学者たちは「哺乳類型爬虫類」と呼んでいたが、最近では「獣弓類」――単弓類のうち活発な代謝能力を備えたもの――と呼ばれることが多い。

  4脚もより長くなり、その付け根はより高い位置になった。そして。脚はそれぞれ直立して、身体を高い位置に保つことができるようになった。脚や背骨を支える筋肉もはるかに強化された。それだけ血流=熱代謝が活発になったというわけだ。
  この型の爬虫類の別の属から、初期の哺乳類が進化していくことになった。


  そのような獣弓類型爬虫類の1種、スクトサウルス( scutosaurus :「鎧で装甲されたトカゲ」という意味)が1頭、砂漠で群れからはぐれた。年老いて運動機能が衰えたために、群れから取り残されたのだ。
  草食性。身長は2.5m前後で、体重は1トン近くあったようだ。というのも、骨格は頑丈で厚い筋肉に覆われていたうえに、表皮の下には骨化した装甲板が連なっていたからだ。そして、とりわけ頭部は頑丈だった。大きくて厚い頭骨は顎が鰓のように張り出し、多数の角状の突起に覆われていた。突起は横や後ろに大きく張り出して、さなきだに強固な首筋を保護していたのかもしれない。

  だが、仲間からはぐれ、運動機能が衰えたスクトサウルスの動きを追いかける、鋭い眼光があった。当時、最強のプレデター、ゴルゴノプシア( gorgonopsia )だ。「(ギリシア神話の怪物)ゴルゴンのような顔」という、恐ろしい名前の凶暴な動物だ。ゴルゴノプシアと(ゴルゴノプスの)複数形なのは、同じタイプに複数の種がいたからだ。ここでは種を特定していない。
  体長3m。この捕食者は、獣弓類(哺乳類)型爬虫類というよりも、さらに進化して、それと哺乳類との中間にある疑似哺乳類動物だという。哺乳類一歩手前の過渡的な進化段階の猛獣である。ということは、スクトサウルスよりもずっと代謝機能が活発で、「ほぼ恒温動物」としての特徴を備えていた。

  だから、脳・神経や筋肉にたゆまず酸素と栄養、熱エネルギーを供給できる体制を整えていた。照準、追跡、攻撃、防御などのあらゆる点で、スクトサウルスを上回っていた。長い足を使って体長の倍近くの幅の跳躍を繰り返して走ることができた。持久力も抜群だった。
  巨大な猟犬(というよりも、地獄の魔犬ケルベロスというべきか)のような体形だった。

  頭部は大きく、当時のいかなる爬虫類よりも大きな容量の脳を搭載していた。顎も大きく発達していた。上顎には左右各2本の巨大な犬歯=牙があって、1噛みでたいていの動物に致命傷を与えることができた。
  その1頭が、動きの鈍ったスクトサウルスを発見して、この獲物に迫っていた。
  必死に逃げるスクトサウルス。だが、崖のように聳え立った砂丘の前で体力は尽きてしまった。立ち続けるのも、おぼつかない。絶望したように倒れ込んだ。
  ゴルゴノプシアは、すっかり消耗したスクトサウルスに追いついて背後に回り、首筋にあの鋭い牙を突き立てた。あとは、老獣の絶命を待つばかりだ。
  こうして、ゴルゴノプスはスクトサウルスの肉を貪り食らうことになった。

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