ウェイルズ公旗(域内用)
連合王国標準旗
スコットランド標準旗
イングランド王国標準旗
ウェイルズ標準旗
北アイアランド聖パトゥリック旗
そんなこんなでエリザベスとチャールズは遅れてキャンプ予定地の湖畔に駆けつけた。
フィリップは妻に首相からの電話はどういう内容だったのか尋ねた。
「王宮に半旗を掲げてはいかが、という提案だったわ」と答えると、フィリップは憤慨した。
「ばかな、あれは王が城に滞在しているという徴じゃないか。それ以外のいかなる意味も持たせてはならんのだ。
このしきたりは、400年以上の歴史があるんだぞ。誰が死んでも、バッキンガムには半旗を掲げないんだ」
だが、チャールズが反論した。
「たかが旗のことではないですか。しきたりを変えてもいいのでは。社会の変化に王室も対応すべきです」
太后――エリザベスの母親:先代の王妃――もフィリップに味方して言い添えた。
「あなたの祖父ジョージ6世の死去のときにも、半旗は掲げなかったわ」
ふたたびフィリップ。
「民衆は意味も理解せずに勝手な要望を抱くのだよ。そのうちに、私たちにも改名を迫るぞ。ヒルダとヘクターにしろとな。民衆が君主に『ああしろこうしろ』と指図するなんて…
そもそも、この喧噪は異常だ。あと48時間もすれば、騒ぎは収まるだろうよ」
夫が激昂気味に声高に話したので、エリザベスは「向こう岸の孫たちに聞こえるわよ」と注意して、この話題をおしまいにした。
バルモーラル城に帰ってから、チャールズは王太子つき秘書官とこの問題について話し合った。
「私の両親は今、以前の私と同じように、ダイアナの虚像によって圧迫されている。同じ苦悩を味わっているのさ。
両親はダイアナの落ち度(醜悪な面)がいずれ暴かれると思っている。だが、ダイアナの虚像は崩れないよ。 なにしろ彼女は、カメラや民衆の前での立ち振る舞いが巧妙だったからね。
いずれにせよ、私は彼らとは別の対応をとらねばならない。
さて、ハイグロウブ城――ウェイルズ公としての居城――には半旗を掲げてくれたかい?
そう、ありがとう。では、反旗が翻っている写真を新聞広報に回すよう手配してくれたまえ。
それに、私からメディアに献花や記帳への感謝の声明を発表したいんだ……いやもとい、私と2人の王子のね」
という具合に、世論の矛先をかわす術策を練っていた。