そのオークションには、マクシーモフを含めて世界でも有力な絵画蒐集家がやって来ることになっている。そこで、サンドラとダニエルは、そのオークションへの参加者の動向を探ろうと考えた。
さて、オークション当日、会場にはヴィクター・ボイドもマクシーモフもやって来た。ところがサンドラにとってショックなことに、ヴィクターはサザビーズのエイジェントの女性をともなっていた。サザビーズは絵画取引きでは世界最大の専門企業だ。失態を演じたサンドラの後釜候補を引き連れてきたわけだ。
競売が始まると、ヴィクターとマクシーモフはそれぞれ大金を提示して、落札価格を吊り上げて作品の奪い合いを展開した。
ところが、この会場には、あの絵画強奪犯グループも忍び込んでいた。彼らは周到に準備された手順で隙を見せずに強奪を実行した。
今回も、ヘクターが警報システムの機能を解除した。次いで、セザールがエル・グレコを競り会場まで運搬する係をだまして昏倒させると、フェルナンドが作品を額から手際よく外して巻き筒にしまい込んだ。そして、屋上からロープで裏道に降下して逃走した。3人は、街路に停めてあったワゴン車で逃走した。
その直後に、競り会場に空の額が持ち込まれたことから、盗難が発覚して会場は大騒ぎになった。
サンドラは偶然、強盗団の逃走場面を目撃した。
彼女は、ダニエルを呼び出して彼の車を借り出し自ら運転して、逃げるワゴン車を追跡した。けれども、結局、サンドラはワゴン車に振り切られたうえに、ハンドル操作を誤りブティックのショウウィンドウに突っ込んでしまい、衝撃で気絶してしまった。
まもなく、バルセローナ市内の大富豪貴族、バソロスの広壮な邸宅でも、エル・グレコの対策が強奪された。今度も、警報システムを解除したのはヘクター。セザールがプレイボウイを演じて、バソロスの1人娘、ガブリエラをたぶらかして、絵が飾ってある部屋のベッドに押し倒しているあいだに、フェルナンドが額から絵を外して持ち去るという隙のない手口だった。
だが、強奪は即座に発覚し、武装した警備員が強奪犯を追撃する態勢を敷いた。そのため、大金をかけて設置した複雑な警報システムを解除する作業にあたっていたヘクターが逃げ遅れてしまった。3人は辛くも逃走路を確保して、邸の裏手の海に面した断崖に向かった。彼らはそこからダイヴしてパラグライダーで逃走した。