武士道シックスティーン 目次
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果し合い
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インターハイ地区予選

  やがてインターハイの時季を迎えた。東松学園女子剣道部は、関東地区予選に向けて5人――先鋒・次鋒・中堅・副将・大将――の選手を選抜した。香織は1年生ながら先鋒に選抜され、早苗もなんとか補欠に選ばれた。
  大会当日、東松学園は香織の活躍もあって準決勝へと駒を進めた。だが、香織は他の部員の試合運びに満足できない。それで休憩時間になると、香織は独りで武道館の階段に座って考え込んでいた。

  そこに早苗がやって来て、その日の好戦績を喜びながら香織に声をかけた。ところが、香織は不機嫌に「こんな生温い戦い方に満足できない」と言い放って、早苗に父親の道場に入門しないかと誘った。
  「でも、もうずっと道場で一緒に稽古しているじゃない」と訝る早苗。
  香織は、父親の道場で徹底的に稽古すればもっと勝ちにこだわる剣法を身に着けることができる――今の部活のやり方では香織が望むような仕方では強くなれない――と説明した。
  ところが、それに対して早苗は「勝負への過剰な拘りは自分の主義に反する」と反論して拒否した。そこから口論へと発展してしまい、ちょっとした拍子に早苗の手が当たって香織は階段から転げ落ちて左腕に怪我をしてしまった。

  香織は怪我の痛みを隠して準決勝に臨もうとして、早苗に応急のテイピングをさせた。とはいえ、左手で竹刀の束頭を握れなければ、まともな構えはできない。そもそも、竹刀を中断に構え続けることも容易にできない。
  そこで、香織は右手片手上段の構えを取って試合に挑んだ。これでは自分から攻撃を仕かけて勝機を見出すことはできない。 とすれば、ひたすら相手の攻撃を観察し攻撃を捌き続け、そして相手の一瞬の隙を衝いて竹刀を打ち込むという戦法しかない。そのことに気がついた早苗は、叫ぶように大声を出し、香織に相手との距離を保って隙を衝くように伝えた。
  香織はアドヴァイスにしたがって――というよりも自分でも同じ戦法を思いついたようだ――どうにか勝つことができた。だが、ひどい痛みに耐えて試合を続けた無理がたたって試合直後に倒れ気絶してしまった。


  香織が気がつくと、東松学園の控室に寝かされていた。腕には応急の治療が施され包帯が巻かれていた。顧問の小柴は「まったく、とんでもない無茶をしやがって」と小言を言って、香織が怪我を隠して試合に出たことを咎めた。
  すかさず、早苗がその怪我は自分の責任だと言い出した。
  「口論になったことから、私が磯山さんを階段から突き落してしまったんです」と。
  だが、香織は「いいえ違います。あたしが足を踏み外してしまったんです」と庇った。
  それにしても、香織の代わりに誰を決勝戦に出場させるかが問題となった。香織はベッドから降りて土下座して「早苗を出してください」と頼み込んだ。
  「早苗は本気になりさえすれば強いのだから……。早苗は気が弱いので、みんなで励まして押し出してやってください」と。
  香織の熱意に押された小柴は主将の村浜ゆかりに確認し、ほかのメンバーの了解を得たうえで、早苗の出場を決定した。
  香織は試合直前に早苗にアドヴァイスして励ました。
  「お前の中段の構えは特別だ。いつもの足捌きを使って相手との距離を保て。そして隙があったら打ち込んで面や小手を取れ」と。

  平常心を取り戻した早苗は先鋒で出場し、日本舞踊で鍛えた得意の足捌きで間合いを保ち相手の攻撃を躱し続ける。そして、チャンスをって放ったメンが決まり、早苗は勝利を収めた。
  早苗の活躍で勢いに乗った東松学園は優位に立ち、インターハイの出場権を手にすることができた。

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