カプリコーン 1 目次
原題について
見どころ
あらすじ
火星旅行の難しさ
ロケット発射の物理学
オレンジの皮の内側
プロジェクトの政治的背景
直前のアクシデント
政府機関の大ぼら
「SF映画」
謀略の綻び
「幽霊」になった飛行士
燃え尽きた衛星
宇宙飛行士たちの逃亡劇
宇宙飛行士を助けろ
爺さんは歴戦の勇士
幽霊が現れる
作品が問いかけるもの

宇宙飛行士を助けろ

  一方、コールフィールドは、目星をつけた閉鎖基地に乗り込み、調査した。巨大な格納室に入ってみた。そこには、大がかりな「火星着陸」の映画セットの残骸が置き去りにされていた。NASA幹部の「権力犯罪」の明らかな証拠だ。
  大気圏突入失敗のニューズを見て、宇宙飛行士たちは逃亡したに違いない。一刻も早く彼らを救出・保護しなければならない。広大な砂漠と丘陵地帯での捜索には、飛行機しかない。
  ということで、コールフィールドは近くの飛行サーヴィス業者を探すことにした。
  見つけたエアサーヴィス会社のエアフィールドには、農薬散布専用の古びた小型の複座式複葉機が1機が置かれていた。その機体を、これまた複葉機と同様に年老いた男が整備していた。その男が社長兼操縦士だ。

  ところがこの爺さん、商談交渉の手並みは辣腕で、コールフィールドの利用申し込みに対して、チャーター1回50ドルの料金のところを、足許を見透かして何と100ドルと吹っかけた。
  テレヴィ記者があっさり要求を飲むと、今度は125ドルまで料金を吊り上げた。コールフィールドは、呆れたが財布を叩いて支払った。
  老練な操縦士は、コールフィールドを機体の前方の座席に乗せて、複葉機を巧みに舞い上がらせた。この爺さん、口も達者だが、腕も達者だった。

◆爺さんは歴戦の勇士◆

  広漠とした盆地を一巡りするうちに、何かを捜索するかと思しき2機のヘリを見つけた。
  爺さんは、ヘリが最新鋭の、非常に高額の機種だと見抜いた。彼らはずいぶん金を注ぎ込んで人を追跡しているらしい。となれば、リスクも高い。こう踏んで、爺さんは強気の交渉を仕かけた。
  「あんたが捜している人物は追われているな。こりゃ、銀行強盗だな。となると、あんたの手に入る金の半分で手を打とう。折半でどうだ」
  コールフィールドは、OKを出した。この業突張りの爺いには、欲の皮を突っ張るだけ突っ張らせておこう。その方が、危険も顧みず真剣に取り組むだろう、と考えたか。


  複葉機が追尾すると、ヘリの行く手の先には、古びた給油所が見えた。ヘリが給油所の近くに着陸すると、追跡者たちは銃を構えながら、給油所の建物に近づいていった。
  建物のなかでは、ブルベイカーがドアの横の壁に張り付いて、追跡者の侵入を一度は食い止めたが、激しい銃撃を浴びていた。ブルベイカーは身を投げるように窓を破って、外に飛び出した。
  ブルベイカーが逃げる方向の先には道路があった。
  そこに複葉機が着陸して、滑走しながらブルベイカーを下側の主翼に引き上げると、すぐに飛び上がった。
  複葉機は見る間に、追跡者の銃撃の射程から飛び去っていった。追跡者たちは、ヘリに戻って追跡を始めた。最新鋭のヘリは見る間に複葉機との距離をつめた。

  ところが、複葉機の老パイロットは、歴戦の勇士で、しかもこのあたりは地形や地勢を知り尽くしたホウムグラウンドだ。
  複葉機は地面すれすれを蛇行するように飛んだ。地面に起伏やうねりがあるところを選んで、コースを取った。目まぐるしく旋回やダイヴ、ホップを繰り返した。
  ヘリは銃撃を仕かけたものの、標的は上下左右に変化するし、銃撃ばかりに気を取られると、地面の起伏に即応できない。湾曲運動する航空機からの銃撃では、銃弾は非常に逸れやすい。
  ついに、ヘリは高度を上げて上方から複葉機の背中を押さえ込もうとした。すると、複葉機は谷間にダイヴしながら急旋回。と思えば、丘陵の尾根のうねりを利用して、ヘリを引き離した。
  ヘリは急追してきた。
  複葉機は地形を読んで、最後の勝負に出た。
  突然、落ち込むように谷間に入り、峡谷を蛇行し、いきなり急峻な斜面に沿って急上昇。断崖のような急勾配が目の前に迫った。追いつくために速度を一気に上げたヘリは2機続けて、地形の急変に対応できず、山腹に激突して、崖下に落ちていった。

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