マッケンジー脱出作戦 目次
収容所脱出の皮肉な結末
見どころ
あらすじ
物語の背景と時代設定
捕虜の扱いの公平性
辺境の収容所
手錠事件
コナー大尉の赴任
陰謀の巣窟
腹の探りあいと駆け引き
脱走計画
怪物、シュリューター
早朝点呼での乱闘
同胞殺害
状況の読み合い
逃走と追跡
巧妙な逃走方法
ドイツ兵発見
皮肉な運命
冷めた歴史観
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パリは燃えているか

脱走計画

  ところで、じつは、シュリューターに率いられたドイツ兵たちは、脱走用のトンネルを掘っていた。この計画で一番の問題は、トンネルの向かう方向と、掘り出した土をどのように隠すかという点だった。緻密な方法を考えるのが好きなドイツ兵たちは、なかなかに組織立った系統的な方法で計画を進めていた。

  シュリューターが案出した方法はこうだった。
  まず、作戦の指揮所はシュリューターが住む1号棟だった。
  だが、トンネルの入り口は、2号棟のトイレの1つの床下を改造して設置されていた。
  そして、2号棟の床から出発するトンネルは、次に3号棟の床下まで通じている。そこから、鉄条網をくぐって川岸の近くまで掘り進められていた。トンネルは側面と上側を補強版で支持されていた。
  掘り出された土砂は、袋に詰められて3号棟の床下までロープで曳き運ばれ、そこからこの棟の天井上まで滑車を使って引き上げられる。天井は丈夫な板によって二重に張られ、補強のために木製の配筋(細い梁)を差し渡してあり、しかも、太い鉄の針金を縒り合わせて天井板・配筋と屋根丸太とを結んでいた。

  つまり、天井板面に相当の土砂を積んでも大丈夫なように改造してあったわけだ。
  これによって、何トンもの土砂を天井に薄く積み上げて隠すことができた。土砂は、1平方メートルあたり1万7000立方メートルの体積で積み上げられるものと計画され、平均約107センチメートルの厚みにしてある。
  トンネル掘り作業とヒュッテの補強工事については、シュリューターは、ドイツ工兵隊の下士官をこき使って技術指導をさせていた。トンネル堀のきつい作業は、いわば直属の部下を班分けして、時間交替制で担当させていた。

怪物、シュリューター

  シュリューターは、ヒトラーユーゲント上がりの生粋のNSDAP――「国民社会主義ドイツ労働者党 Nationalsozialistisches Deutsches Arbeiterspartei =ナチス党の略称――党員だった。目的のためには仲間の犠牲を含めて手段を選ばない冷酷さと、目下の者を酷使する残虐さ、謀略のための智謀の深さ、執拗さ…では、群を抜いていた。
  それゆえ、コナーとの知恵比べでと出し抜き合いでは、狡猾さでまさるシュリューターがいつでも半歩ないし1歩先を進んでいた。その理由は、徹底した残虐性、冷酷さを持ち合わせていることだった。そして、周到さと読みの深さで、わずかにコナーに優っていた。

  この指導者の指示で、捕虜のなかで洋服仕立ての技術を持つグループは、ブリテン兵の制服やヘルメットなどの装備を製作していた。上半身だけのマネキン人形の体形に合わせて(余裕を持たせて)寸法を取っていた。これは、脱走への準備のための準備だった。シュリューターの作戦は、コナーの挑戦を予期してのものだった。

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