マッケンジー脱出作戦 目次
収容所脱出の皮肉な結末
見どころ
あらすじ
物語の背景と時代設定
捕虜の扱いの公平性
辺境の収容所
手錠事件
コナー大尉の赴任
陰謀の巣窟
腹の探りあいと駆け引き
脱走計画
怪物、シュリューター
早朝点呼での乱闘
同胞殺害
状況の読み合い
逃走と追跡
巧妙な逃走方法
ドイツ兵発見
皮肉な運命
冷めた歴史観
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史上最大の作戦
パリは燃えているか

巧妙な逃走方法

  崩壊した3号棟の調査のなかで、シュリューターたちがトンネルから脱出したことが判明した。ところが、シュリューターはトンネルを抜ける間際に、入口から中ほどまでのトンネルを崩落させて塞いでしまった。したがって、トンネルの行き先はついに解明できなかった。
  その報告を聞いたペリー少佐は、自己保身・責任回避の癖がついた頭で、トンネルが崩落したのだから、脱走を企てたドイツ兵捕虜は生き埋めになってしまって脱走は失敗に終わったものと考えた。そこで、その見通しを軍の上層部と情報部に報告した。
  だが、コナーはシュリューターのずる賢さと周到さを知悉していたから、そんな甘い見通しは成り立たないと考えていた。つまり、脱出は成功したはずだ、と。その方が、彼の目論見にとっては都合がよかった。追跡して脱出経路を押さえて、ウーボートもろとも捕獲ないし殲滅するつもりだったからだ。

  ところで、脱走用のトンネルは、決行時期を早めたために、ブリテン軍の兵舎の床下までしか到達していなかった。そこで、ドイツ兵たちは、兵舎の床下からブリテン軍の隙を突いて収容所敷地外の森まで逃れることになった。
  彼らにとって幸いなことに、ブリテン兵のほとんどは、崩壊した3号棟での救難・救出活動にかかり切りだったので、兵舎の床下から周囲の森林まで逃げ去るドイツ兵が発見されることはなかった。この意味では、置き去りにした同胞を犠牲にするという、シュリューターの残虐な方法が、まさに図に当たったというべきか。
  目的のために手段を選ばないナチスのエリートの計画は、恐るべきものだった。

  さて、ブリテン軍のために火薬を運ぶものであるかのように偽装したトラック――警官に扮したドイツ兵が先導――は、森のなかの道路でシュリューター一行と落ち合った。ドイツ兵たちはトラックの荷台に乗りこんだ。そのまま、無線電信で打ち合わせた海岸まで逃走する計画だった。
  警官が先導する爆薬運搬車は、堂々とスコットランドの公道を走り続けた。あまりに目立つ偽装ゆえに、そしてまた戦時で軍事物資の輸送は最優先される状況もあって、道路で警戒や検問に当たる警察官を含めて誰しもこのトラックを疑わなかった。
  脱走が発覚してから1晩が経過した。だが、脱走ドイツ兵に関する情報は、まったく収集されていなかった。シュリューターたちは、警察や軍の警戒網を、完全にすり抜けて逃走している。コナーは幾分焦り始めていた。


  ところが、ある海岸沿いの町の警察官派出所の警官から通報が入った。
  「軍用の爆薬運搬車が、警官のバイクに先導されて、今目の前を通過していった」と。情報部は、報告をよこした警官から場所・方向を聞き取った。そして、軍の経理部に情報を確認した。
  この時間帯にこの方面を通過して軍に爆薬を運搬するトラックは存在するのか、と。答えは、爆薬の運搬は、民間企業の車両を使うことはないということだった。
  こうして、そのトラックはきわめて疑わしいと判定された。その後、トラックが向かったであろう方面の海岸沿いの道路に捜索の網を集中することにした。空軍からは偵察用航空機が派遣されることになった。

  数時間後、偵察機ホーカーハリケイン Mk-Tは、スコットランド北部の海蝕台地に沿った道路を北西に向かって走る偽装トラックを発見した。偵察機は旋回して高度を下げ、トラックに接近して、それが目標のトラックであることを確認した。しばらく上空から旋回しながら追跡した。
  ところが、道路を覆い隠すように樹林が広がる場所で、トラックを見失ってしまった。
  トラックのドイツ兵は、偵察機が迫ってきたことを知ると、樹林帯にトラックを乗り入れて停止した。そして、脱走兵たちを荷台から下ろした。彼らは、場揮発物運搬車両の偽装(の覆い)を外すと、トラックに新たな偽装を施した。今度は、アメリカ軍基地に家具調度品を運搬する車両を装った。
  このトラックには、何種類もの偽装手段が用意してあるらしい。
  こうして、ブリテン側が追跡目標としていた偽装トラックの外観は、まるきり変わってしまった。
  偽装トラックは、やがて河川を小型筏船フェリーに乗って渡った。
  対岸に渡ったそのまま走り続けて、ウーボートと落ち合う海岸近くの草原に到達した。そこは海蝕台で、草原の端から波打ち際までは、20メートル以上の高さの断崖で隔てられていた。
  その海岸台地には、古い砦(城館)の廃墟があった。ドイツ兵たちは廃墟の壁をよじ登って、周囲を観測した。ブリテン軍や警察が接近する気配、沿岸を哨戒する船艇がないことを視認した。
  脱走捕虜たちは、トラックからウーボートが浮上する沖合まで漕ぎ着けるためのゴムボートや武器、弾劾を懸垂降下するためのロープを取り出した。ドイツ兵先遣隊は断崖からロープを垂らして、降下を開始した。
  やがて、近くの沖合にウーボートが浮上した。

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