ヒトラーの雁札 目次
ベルンハルト作戦とユダヤ人狩り
見どころ
生き残った小悪党の回想
収容所内での差別と格差
贋札製造のユダヤ人たち
ベルンハルト・プロジェクト
ポンドからドルへ
巨額決済の経済的な意味
残された贋札
ベルンハルト作戦の結末
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諜報機関の物語
ボーン・アイデンティティ
コンドル

残された贋札

  さて、ヒトラーとナチス党は電撃戦による短期決戦でブリテンとの休戦講和に持ち込むという希望的観測にもとづく戦略に賭けていたが、戦争は長期化し、やがて連合軍側の東西両戦線の構築が進み、ドイツはしだいに追いつめられていった。ナチスの甘い戦略――というよりも戦略のの欠如――で、ドイツ軍はあらゆる戦線で崩壊と後退を余儀なくされていた。ついにベルリンにも連合軍による猛爆撃がおよぶようになった。

  映画の物語の結末はこうなる。
  機を見るの敏なるヘルツォークは、ドイツ軍の全面的な敗北は避けられないと判断した。そこで、ある真夜中、100万ドル相当の贋ドル札を詰め込んだ荷物を手に単独で密かに逃亡をはかった。それを察知したサリーは、乱闘の末、銃を奪ってヘルツォークを殺そうとしたが、それまでの腐れ縁もあって結局逃亡を見逃した。
  しかし、ヘルツォークが持ち出そうとした贋札の容器が残った。

  とかくするうちに、連合軍がベルリンに迫ったことから、ある日、収容所から全ドイツ兵が泡を食って逃走し始めた。ドイツ兵の動揺を見たユダヤ人たちが自ら蜂起し武器を奪い取って、仲間を収容所から解放した。
  ところが蜂起したユダヤ人たちは、贋札作戦の協力者たちが同じユダヤ人とは知らなかったので、サリーたちを襲撃しようとした。日頃垣間見ていた特別扱いに対する憤懣や反感で、サリーたちが同じユダヤ人だとは思わなかったらしい。
  間もなく誤解は解けて、サリーたちも贋札印刷を強制されていたユダヤ人だとわかって解放された。印刷工だったユダヤ人たちは自由になった。


  ところが、彼らは自分たちが隔離され特別扱いを受けていた間にユダヤ人仲間たちの多くが処刑されたことを知った。そのうえに、作戦に協力すれば身の安全を保証すると約束されていたはずの家族が虐殺されていたことも知った。
  悲惨な現実に直面した何人かは、ナチスの贋札印刷作戦に協力してきた自分の裏切り行為を恥じて――しかも、収容所で多数のユダヤ人が虐待・虐殺された実情を知ったことで自責の念が昂じたため――自殺した。自殺せず生き延びた者たちも、ナチスの作戦にに協力してきたことへ負い目、自責の念によって、その後長きにわたって精神的な苦悩を引きずることになった。

  連合軍はドイツ全体を占領し、ナチスの支配から解放した。だが、空爆や地上戦によってドイツ全体が残骸だらけの焼け野原になっていた。
  こうして、戦争による荒廃と残骸のなかに、サリーは巨額の精巧な贋ドル札ととともに残された。
  それからサリーは、巨額の札束に復讐するように、そして自分を責めるようにモンテカルロのカジノと高級ホテルに居続けて、賭博や豪遊で浪費を続ける荒んだ日々を送るようになった。

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