刑事フォイル 目次
戦時体制と犯罪捜査
戦時下の闇を暴く
第1話 ドイツ人の女
  ドイツ人隔離政策
  身分特権と差別
  エリートの特権
  継母と娘の対立
  敵対感情の増幅
  グレータ惨殺事件
  エリートの隠蔽工作
  ジャッドの殺害
  マイケルの欲望
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グレータ惨殺事件

  グレータは毎日決まった時間に乗馬を楽しんでいた。走るコースも決まっていた。
  ある日の朝、そのことを知悉している何者かが、グレータが乗馬で通過するコースとなっている樹木の間にピアノ線を張った。グレータの首筋に当たる位置だった。馬の大きさとグレータの体格をも知る者の仕業だった。
  時速40キロメートル以上の高速で騎乗する騎手からは、細いピアノ線を視認することはできない。だから、グレータはそこを走り抜けようとして、首筋を鋭く切り裂かれて即死した。

■ 捜 査 陣 ■
  グレータ殺害事件はヘイスティングズ警察署が捜査に当たることになった。
  この警察署に転属してきたフォイル警視正は、署の刑事部長 Detective Chief Inspecter :DCI として捜査を指揮することになった。とはいえ、小さな警察署であるうえに人員不足なので、フォイル自身が捜査活動をおこなうことになった。
  ところが、フォイルはすでに労働省から依頼されている事件の捜査も手がけていた。それは、公務員が兵役を違法に免れさせるのと引き換えに多額の賄賂を受け取っている汚職事件だった。

  手いっぱいのところに殺人事件が起きたため、フォイルは上層部に人員の補充を求めたところ、陸軍機械化輸送部隊の若い女性兵士、サマンサ・ステュアートがフォイルの専属の運転手として配置されることになった。しかし、捜査員は補充されなかった。フォイル自身の権限によって采配せよということになった。
  サマンサは好奇心旺盛な可愛い女性で、教区牧師の娘だった。保守的で口うるさい父親から逃れて自立するために、志願して陸軍の女性兵士となったという。彼女は自分の能力を発揮する場を求める、つまり自立を求める若い女性なのだ。
  サマンサは「サムと呼んでください」とフォイルに挨拶し、捜査に関していろいろ質問してきた。フォイルは、サムを犯罪捜査に参加させるつもりはないので、「運転に専念して、捜査に関しては口を出さないでくれたまえ」と釘を刺した。


  人員不足に悩んでいるフォイルは、兵役でヨーロッパ戦線に送られていた警察官、ポール・ミルナーが戦場で重傷を負ってヘイスティングズの病院に送還され、治療を受けていることを知った。ミルナーは右足を失うことになった。フォイルは入院しているミルナーを何度か見舞いに訪れ、自分の指揮下で刑事として犯罪捜査に加わってほしいと頼み込んだ。
  戦傷によって心が傷ついているミルナーは、はじめは捜査員となることに躊躇していた。だが、フォイルの指示で捜査調書の整理と清書をしてみると、推理力や洞察力が豊かなことがわかり、それがミルナーの自信にもなったか、フォイルのもとで刑事として動くことになった。
  こうして、ヘイスティングズ警察署の刑事部門の――フォイル警視正、ミルナー巡査部長、運転手サマンサという――ユニークな3人組ができ上った。

■兵役をめぐる汚職事件■
  さて、フォイルは自ら囮――兵役を免れるようとして大金を払い用意のある人物と――なって賄賂を求める公務員キーガンに近づいた。自分の息子を戦場に送りたくないという口実で、キーガンと会って、兵役回避の手口を聞き出した。
  キーガンによれば、行政管区で記録を改竄し賄賂を支払った人物を兵役名簿から抹消してしまうのだという。
  手口を聞き出したフォイルはキーガンを逮捕しようとしたが、隙を突かれて逃がしてしまった。ところが、キーガンの逃走経路に立ちふさがったサムがごゴミ・バケットの蓋で殴り倒しため、捕らえることができた。フォイルはサムの手柄を認めた。
  フォイルはキーガンを尋問して、兵役逃れのために大金を支払う「顧客」に渡りをつける窓口役をしている人物がジャッドであることを聞き出した。
  フォイルが事情聴取というか捜査のためにジャッドのパブを訪れたのは、そういう経緯があったのだ。

■殺人事件の捜査■
  他方でフォイルたちはグレータ惨殺事件の捜査も進めていた。彼らはまずグレータとボーモント家をめぐる人間関係と利害関係を調べていった。グレータ殺害の動機を持つ人物を洗い出すためだ。
  さしあたっての疑問は、ドイツ人であるグレータへの憎悪や反感が引き起こした犯罪か、それともボーモント家の財産に絡んだ犯行かというものだった。さらに、住民のなかには、マーク・アンドリュウのように、グレータに強い反感を抱き、横柄な有力者のヘンリーを恨む者もいた。そして、ヘンリーの娘は継母のグレータと不仲だということも判明した。

  フォイルとしては、ヘンリーとグレータの反感を抱くマークの心情を聞き出したことなどから、ドイツ人であるグレータがなぜボーモント家に住み続けることができ、なおかつ自由に動き回ることができたのかという点に強い疑惑を感じた。そこで、ヘンリー・ボーモンントにその疑問をぶつけてみた。
  痛いところを衝かれたヘンリーは質問を突っぱね、フォイルを威圧して追い返した。そして、ロンドンのエリート人脈を動かして、フォイルを封じ込めようとしたようだ。

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