刑事フォイル 目次
戦時体制と犯罪捜査
戦時下の闇を暴く
第1話 ドイツ人の女
  ドイツ人隔離政策
  身分特権と差別
  エリートの特権
  継母と娘の対立
  敵対感情の増幅
  グレータ惨殺事件
  エリートの隠蔽工作
  ジャッドの殺害
  マイケルの欲望
『刑事フォイル』作品索引
おススメのサイト
第2次世界戦争をめぐる作品
史上最大の作戦
空軍大戦略
医療サスペンス
コーマ
評  決
信州散策の旅サイト
小諸街あるき

マイケル・ターナーの欲望

  フォイルの脳裏では、これまで収集してきた情報から、グレータとジャッドの両方を殺害した容疑者の像が形を取り始めた。焦点となっているのは、すなわちマイケル・ターナーだ。
  グレータの乗馬コースを詳しく知る機会があって、財産管理をめぐって利害関係がありそうな者。そして、ジャッドに何やら弱みを握られていて、しかもボーモント家の自動車を持ち出す機会がある者。マイケルしかいない。
  では、マイケルがグレータを殺す理由は、彼女がサラとの結婚に強く反対したからだろうか。たしかに、サラと結婚すればボーモント家の巨額な財産が手に入るから、結婚の邪魔者は排除したくなるだろう。

  だが、グレータがどれほど反対したところで、結婚を承認する権利を持つのはヘンリーだけで、ヘンリーは2人の結婚に反対していない。グレータがたんに反対の意思表示をするだけでは、殺害の動機にはなりえない。
  とすると、もしマイケルの密会情事(不倫)相手がグレータだったら、どうだろう。これは大きな弱みとなる。グレータの夫、ヘンリーを敵に回して、サラとの結婚はご破算になるに違いない。そう考えると、グレータとジャッド2人の殺害の強い動機がマイケルにはあることになる。

  マイケルがヘイスティングズを訪れた日にグレータも外出している事実をつかみ、そのほかの状況証拠を固めたフォイルは、マイケルに直接ぶつかることにした。
  フォイルはマイケルの事務所を訪ねて鋭く問いただした。
  はじめは言い逃れしようとしていたマイケルだったが、フォイルが突きつける事実や状況証拠と明晰な論理に追い詰められていく。ついに2つの殺人事件への関与を認めた。
  ところが、彼は戦時体制を理由に開き直って、フォイルに捜査をやめるように言い出した。彼が持ち出した言い分はこうだ。


  マイケル・ターナーは今、海軍の特任大佐としてドイツ軍の連絡暗号システムの解読プロジェクトに携わっている。暗号システムの解読には今一歩のところまで来ている。
  ところが今、このティームを率いるマイケルが殺人容疑で逮捕起訴され、収監され死刑になると、プロジェクトは頓挫してしまう。しかし、暗号解読を達成すれば、ブリテン軍のドイツ軍に対する優位は確定的になり、戦争の終結が一挙に近まる。暗号解析はブリテン国家の利益にとって大きな貢献で、大きな功績となる。
  だから、今は見逃してくれ、というのだ。「あなたは、ブリテンの戦勝に大きく貢献している人物を葬り去ろうと言うのか」と言い出した。
  だが、フォイルは、これまた戦時体制に乗じて特権を振りかざそうとするエリートに対して容赦なく逮捕・送検をおこなった。

■グレータとマイケルの確執■
  ドラマは、殺人事件の原因となったグレータとマイケルとの対立を描き出す。
  マイケルは、顧問弁護士をしているヘンリー・ボーモントの妻の美貌に目をつけて深い関係になった。ところが、ボーモント家の事情を知るうちに、当家の年頃の令嬢サラが結婚すると巨額の資産を手にするのを知って、サラに近づき恋人となり、さらに婚約を取り結ぶにいたった。
  グレータは、財産欲しさのこの乗り換えに憤慨し、サラとマイケルとの結婚に強く反対した。だが、彼女にはサラの結婚を拒絶する権利はない。
  そこで、家族や世間に対して――ヘンリーとの離婚を覚悟して――彼女のマイケルとの不倫関係を公表しようとしたようだ。そのため、殺されてしまったのだ。

前のページへ || 第2話へ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界