さて、ゲストハウスの滞在客のなかには反目があった。
ブレイク・ハーディマンは陰気なフランク・ヴォードリーを毛嫌いしていて、ミルナーにフランクが自分たちの宝飾品などのもと物を盗み出しているようだから調べてくれと申し入れた。
一方、フランクはブレイクに対して「お前たちの悪行を知っている」と脅していた。フランクはハーディマン夫妻の弱みを何かしらつかんでいるらしい。
ジャーナリストのアマンダ・リースは大の犬嫌いで、ジェインが犬を連れて庭園を歩くのが気に入らなかった。アマンダは、庭園内のサマーハウスを独り占めして、ほかの滞在客との接触を極力避けながら、原稿執筆にいそしんでいた。
ところがある日、ミルナーによる事情聴取を受けるべく警察署を訪れるために外出したアマンダがサマーハウスに戻ると、フランク・ヴォードリーが死んでいた。通報を受けた警察が捜査したところ、死因はシアン化カリウムを飲んだことだった。
一見、自殺とも思われるが、遺書もなく側頭部部に激突ないし殴打の痕跡があることから、自殺と他殺の両方を考慮した捜査となった。だが、ミルナーは捜査に行き詰りつつあった。だが、コリアーには熱意が欠けていて、相談することもできなかった。
そこでミルナーは、フォイルにこれまでの捜査の進展状況を伝えて、指示を仰ぐことにした。フォイルは殺人事件として捜査を進めるべきだと助言した。だが、そのことがコリアーに知れてしまい、ミルナーは叱責を受けた。
とはいえ、コリアーはロンドン警視庁に戻ることになり、今後の捜査をミルナーに一任することにした。つまり、コリアーはフォイルを停職に追い込んだだけで、食糧闇取引事件もヴォードリー死亡事件も解決しようと熱意を見せることなくヘイスティングズ署を去ることになった。
ミルナーはコリアーのやり方に反発を感じていて一刻も早いフォイルの復帰を望んでいた。そこで、フォイルの復帰をはかるため、コリアーが保管していたフォイルをめぐる捜査資料をこっそり写し取ってフォイルに渡した。
それというのも、フォイルへの嫌疑は冤罪で、どういう経緯でそういうことになったのかをフォイル自身が調べた方がいいと判断したからだ。