最初の物語は、シチリアから亡命してきたヴィトが築き上げたマフィア組織の現状(1650〜60年代)を描く。
コルレオーネ家の末っ子、マイケルは、イタリア人社会とマフィアの因習や掟を嫌っていた。それでも、第2次世界戦争後、マイケルは家族のもとに顔を出した。
そのとき、マフィアの血みどろの抗争が始まろうとしていた。そのなかで、父が命を狙われ、兄が殺されると、一族の「血の絆」が心によみがえった。
マイケルは、敵対組織に報復を果たし、現代アメリカの経営者の冷徹さと知性を備えたドンとして台頭していく。
次の物語は、コルレオーネ家の歴史とヴィトの人生を背景に描き、それにオーヴァーラップさせながら、マフィアのボスとなったマイケルの血で汚れた人生の歩みを描き出す。
1920年代。シチリア島のコルレオーネ村の貧しい小作農民の息子、ヴィトの家族は、地主ギャングのボスによる迫害を受け次々に殺されていった。
母親たちは、ヴィトを新天地アメリカに逃れさせることにした。ヴィトは、ニュウヨークのイタリア系移民社会で生きていくことになった。
だが、イタリア系移民社会にもボスはいた。街のボスは、義理と恩顧などの売り買いを組織する力を手に入れることで、成り上がっていった。
しかし、権力を得ると、権力を振り回して利権を拡大するようになっていく。
だから、ボスたちは成り上がるほどに住民から恐れられるとともに厭われ、敵対者を増やしていく。
ヴィトは、イタリア人街の庇護者から抑圧者に変わったボスを殺し、やがて新たなボスの地位を手に入れた。そして、彼が組織したファミリーは、売春やアルコール販売など裏社会のビジネスを牛耳りながら、ニュウヨークのさまざまな利権を獲得していった。
こういうファミリーは、北アメリカでいくつも出現、成長した。
アメリカの移民系社会から生まれたマフィア組織は、いくつかの大都市の裏社会を牛耳り、やがて北米全域におよぶネットワークを築き上げた。
ニュウヨークでボスの地位を固めたヴィト・コルレオーネは、故郷シチリアに帰って、家族を皆殺しにしたマフィアの首領への復讐を果たした。
シチリア・マフィアの権力と組織は、5世紀以上も前からの農民の貧困と従属を固定化している。アメリカ政府は冷戦構造のなかでその犯罪組織と癒着してきた。ヨーロッパとイタリアでの軍事的優位や影響力を保つためだった。
歴史は皮肉なものである。
ニュウヨークに戻ったヴィトは、偉大なゴッドファーザーへの道を歩み始めた。
その数十年後マイケルは、父親が建設したファミリーの権力ネットワークを引き継いだ。冷徹な判断力と戦略眼をもって、組織を拡大してコルレオーネの帝国を築き上げていく。
だがそれは、家族の絆を無残に引き裂き、冷酷で孤独な指導者としての道に彼を追い込むものだった。
マイケルは、投資話に乗ってのキューバ視察の途中、革命派の民衆の志操の高さ、目的意識の強さを目のあたりにする。他方で、キューバ政府・軍の腐敗堕落ぶり。反乱=革命は成功するだろうと見た。
いや、革命はすでに始まっていた。すぐにキューバを撤収することにした。そして、コルレオーネ・ファミリーの動きは、新たな局面に入っていく。
というのも、投資話はユダヤ系ファミリーがコルレオーネ・ファミリーを陥れるために仕組んだ罠だったからだ。