しかし、今回の捜査の泣き所は、頑固で見栄っ張りのドゥゴールが、警護のレヴェル引き上げと暗殺者の特別捜査を拒否したことでした。
つまり、捜査と追跡は、大統領にはオフレコで非公開・秘密の活動にならざるをえないことでした。公開捜査はできないのです。
ルベルは会議が終わるや、同じ殺人課の次長、リュシアン・カロンを補佐官に任命。
ただちに捜査計画を立案し、その夜から国際刑事警察機構(INTERPOL)をつうじて欧米各国の捜査機関の責任者に、スナイパーと思しき人物に関する情報の収集・捜査を依頼し、以後は直接の連絡回線を確保しました。
ロンドンのスコットランドヤード(警視庁)公安部は、偽のパスポート申請の線で捜査を進め、30年ほど前に幼くして死去したポール・ダガンという男性名でパスポート申請手続きがあったことを突き止めます。
また、カルスロップという兵器商の男がしょっちゅう仕事で外国に出張していることを聞き込みます。そして、ジャッカルに当たるフランス語のつづりから、狙撃者はチャールズ・カルスロップという名のブリテン国籍をもつ男ではないかと割り出しました。
これらの情報は各国の捜査当局、外務在外公館に伝達され、調査が始まります。
一方、OASはメンバーの若い美女を、対策会議の参加者である大統領側近の高官に接近させ、その愛人に仕立て上げるのに成功しました。
おりしも、パリの富裕層は国外ヴァカンスに出かけている時期、大佐の家族もみなパリを離れていました。大佐はだれにも気兼ねせず、若い愛人をアパルトマンに囲い込みました。
この美女は腕によりをかけて大佐に媚を売り、寝物語に捜査の進展状況を聞きだし、OASの地下連絡員をつうじてロダンに通報しています。