しかし、内務大臣は、容疑者の偽装人物が特定ができたとして、この時点でルベルを解任します。やはり、パリ警視庁は、国家装置としては軍や諜報機関よりも一段下に見られているようです。
さて、ルベルが解任されて数日間、官憲当局はジャッカルの足取りをまったくつかむことができません。ルベルは呼び戻されます。
捜査陣にはあと幾日猶予が残されているのか。つまり、狙撃の実行日はいつか。ルベルは考え込みます。ドゴールが公式行事に姿を現し、狙撃の標的になりやすい状況が生まれるのはいつか。
そうだ、8月25日、日曜日はフランス解放記念日で、ドゴールは終日公衆の目の前に姿をさらし続ける。だとすると、残されたのはあと2日。だが、ジャッカルはどこに身を潜めているのか。
デンマーク人ルンドクイストが列車に乗った、という情報を受けたルベルは駅に直行しますが、ほんのわずかな差で取り逃がします。ジャッカルは駅に近づく警察車両を横目にタクシーに乗り込みます。
その後、デンマーク人、ルンドクイストはパリ市内のどの宿泊施設にも姿をみせていません。
ジャッカルはこれまで、いつもあと一歩で当局の手から逃げることができました。
これは、捜査陣の動き、対策会議の情報が漏れているに違いない。こう考えたルベルは、会議参加者全員の電話を盗聴させ、かの美女が真夜中にOASに電話する声を傍受録音し、これを会議の場で公表しました。
大統領の側近が自分の過失(罠にはめられたこと)を告白し、退席します。
彼を追ったルベルたちは、高官がくだんのアパルトマンで服毒自殺するのを放置して、女スパイが部屋に戻るのを待ち、逮捕します。
一方、ジャッカルは潜伏場所を見つけるためにサウナに行き、おそらくは同性愛嗜好と思われる中年の男と知り合いになります。そして、その男の住居に滞在する作戦に出たのです。
こうして、 完全にパリの一般市民の生活空間に溶け込んでしまいました。