日本の刑事ドラマ 目次
日本の刑事・警察ドラマ
『踊る大捜査線』の眼差し
    官僚組織としての警察
    犯罪捜査の政治力学
    警察の官僚装置と組織運営
    捜査本部の組織と運営
    階級序列と捜査活動
『ハンチョウ』が描くもの
    安積班の組織運営スタイル
    班のメンバー
    そのほかの面々
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班のメンバー

  さて、そういう安積警部補が率いる強行犯係のメンバーは、なかなかに個性派ぞろいだ。
  ハンチョウを補佐して、手堅く組織運営の原則に忠実にソツなく振る舞うのが、村雨秋彦。長身で精悍な風貌。
  巡査部長で、誰からも能力を高く評価されている。課長などからは警部補への昇進試験に挑戦しろと勧められるが、警部補になれば安積班から「卒業」せざるをえなくなるのが嫌で、何となく昇進を回避している。自分にないものを学ぶために、安積やほかのメンバーからの刺激を受け続けていたいからだろうか。

  安積がときに警察組織の原則(暗黙の束縛)を打ち破って、個性を突出させ、自分自身の倫理観や価値観を最優先させるのに対して、村雨は組織原則をきっちり守ろうとする。
  その意味では、安積にとって、村雨は卒のなさや堅苦しいまでの原則性が鼻につく部下ともいえる。しかし、村雨は、安積が意図的にオミットしようとする組織運営の原則をカヴァーしたり、ほかの班員たちへの任務の割り振り役を果たしている。
  捜査方法や推理はきわめて論理的で、思考は明晰。いわゆる優等生タイプ。しかし、そういう自分に欠けている(というか表に出さない)資質を、安積から学ぼうとしているのかもしれない。

  これと対照的なのが、同じく巡査部長の須田三郎。小太り(いや太りすぎ)で、動きは鈍くてぎこちない。
  ところが頭脳は明晰で論理的な思考力はなかなかにすぐれている。しかし、捜査や推理においては論理よりも直感や閃き、感情の機微を最優先する。彼には、直観的に犯罪や事件の本質や容疑者の性格をつかんでしまう不思議な能力があるらしい。
  そして、被害者や容疑者の立場を深く想いやって感情移入しがちになる。
  そのせいで、ときどきドジを踏むが、ほかの誰にも考えつかない方向から事件に切り込む独特の分析や捜査手口を見せて、難事件を解決へと導くもしばしばある。


  安積にとっては、手堅く、いや堅苦しく、有能さを見せつけるかのような村雨よりも、個性が理解しやすく、阿吽の呼吸で捜査の任務を分担できるタイプだ。というのも、須田が新任の頃にコンビを組んで、直属の後輩=部下として指導したのが、安積だったからだ。
  難事件の捜査では、捜査をめぐる通常の原則が通じないことがある。そういう場合に、安積が打ち出す破格的な手法に最初に乗るのが須田で、彼自身も破格的な捜査手法に挑むこともある。

  ハンチョウは、この対照的な2人に相当の信頼を置いている。だから、自由にやらせる。
  安積は、この2人に若手をそれぞれ1人組ませて、OJT――実地の捜査でおこなう教育訓練――を任せている。

  村雨についているのが、新任の桜井太一郎巡査。須田についているのが、黒田和也巡査長だ。
  桜井は、警察学校を出て交番勤務ののちに配属されて1年目で、刑事=捜査員としては新人。これに対して、黒田はまだ若いが多方面に目配りができる有能な捜査員だ。軽いフットワークで敏捷に動き回る。しかも、先輩や上司への配慮を忘れない。これまたスポーツマン型の優等生。

  以上のメンバーに加えて、ただ1人の女性班員が、水野真帆(巡査部長)。
  原作では登場しないメンバー。スタイル抜群の美貌の女性刑事で、テレヴィ・ドラマ向けの人物設定。
  とはいえ、普段は安積とコンビを組んで動く重要な役どころで、刑事としてのキャリアアップをめざしている。プライヴェイトでのステディの恋人づくりや結婚相手捜しは後回しになっているようだ。風貌のとおり切れ味抜群の頭と身体のはたらきで、安積を巧みに補佐する。

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