ゴジラ & 怪獣映画 目次
考察の視座と課題
はじめに
怪獣映画と私の少年時代
1954年版ゴジラをめぐる問題
ゴジラのスペック
日本の軍事的環境
閑話休題コメント
対ゴジラ軍備と安保条約
特撮映画と戦争
84年版ゴジラと日本の軍事的環境
ゴジラとの戦い
日本の軍事的環境
ファンタジーとしての怪獣映画
広島とフランケンシュタイン
リヴァイヴァル後のゴジラ
ゴジラ対ビオランテ
ゴジラ対キングギドラ
タイムパラドクスのパラドクス
怪獣が破壊した建築物をめぐって
最新高層ビルの「洗礼

リヴァイヴァル後のゴジラ

  さてゴジラの話題に戻るとして、そもそもの当初から、ゴジラ映画の制作者たちは、生物としてのゴジラに独特の「こだわり」を持ち続けていたように思う。
  特撮技術やCGの応用技術の発達とともに、リヴァイヴァル後のゴジラにはその「こだわり」がより明確に現れてきたようだ。
  84年版では、ゴジラの頭部=顔の動き・表情に生き物としての反応を凝縮させていた。まるで、狼の顔の動きを写したかのようだった。

ゴジラ対ビオランテ

  「ゴジラ対ビオランテ」では、生化学、遺伝子工学の技術で、ゴジラの細胞と植物とを合成・重合してビオランテをつくり出した。その植物が花が美しいバラということもあって、女性向きのファンタジーの色合いを濃くしていた。
  当時、私の周りでは、この映画について女性からの評価が高かった。
  そして、ゴジラの表皮(うろこ)の暗緑色は、植物細胞との融合怪獣ビオランテでいよいよ強められて、その不気味さ存在感を際立たせていた。
  この映画では、ゴジラ撃退のための兵器や軍事的攻撃の展開という点では、自衛隊が単独で登場した。以前からの兵器、メイザー砲戦車に加えて、スーパーX-Ⅱ、落雷誘導装置などが登場した。
  そして、遅ればせながらアメリカ軍の野戦(局地戦)戦術の変化に対応して――地上の敵軍を攻撃する――新型ヘリコプター編隊の活躍の場面が増えた。ゴジラの運動速度は戦車並みなので、ジェット戦闘機よりも対戦車ヘリの方が攻撃場面の状況設定としてはリアリティが増すからだろう。
  そのため、自衛隊の撮影協力はいよいよ拡大して、これ以後、ゴジラ映画は、自衛隊の新鋭兵器のパブリシティ(広報発信)の檜舞台となった。

ゴジラ対キングギドラ

  この映画(91年版)では、ゴジラ誕生の起源――ゴジラはいかにして生まれたのか――を主題にしている。ゴジラは、タイムパラドクスによって、2度誕生するのだ。そして、2度目の誕生では、スケイルが一回り巨大化する。
  最初の誕生の経緯は、次のとおり。
  太平洋戦争中、赤道直下の珊瑚礁諸島にあるラゴス島には全滅寸前の日本軍部隊がいた。アメリカの艦隊と上陸部隊が迫っていた。だが、アメリカ軍が上陸攻撃を開始したとたん、この島に生き残っていた恐竜、ゴジラザウルスが、自分の棲みかを守ろうとして、アメリカ軍を撃退した。そのため、日本軍部隊は全滅を免れ、帰国することができた。

  ここではゴジラサウルスの直立姿勢や歩き方に、その時点での最新の恐竜研究の成果が反映されていた。そのため、怪獣ゴジラと恐竜(ゴジラサウルス)との――骨格や筋肉構造や運動スタイルなどに関して――距離が広がってしまい、もはやゴジラは恐竜との類縁関係が希薄化したようだ。物語の設定では、ゴジラは恐竜のミュータント化で生まれたことになったにもかかわらず。

  ところが、戦争直後、その島の付近でアメリカの核実験がおこなわれ、その影響で、あの恐竜は突然変異し、巨大化、凶暴化してゴジラになった。

  この映画は前作を受けて、自衛隊のGフォース(ゴジラ対策専門部隊)がゴジラの動向の監視をおこなっている。そのレーダーでは、ゴジラはいま、福井県若狭湾沖に潜んでいる。
  この年、世界各地にUFOが飛来した。よりにもよってUFOの乗員は、日本政府に交渉を申し入れてきた。その飛行物体は地球外からの宇宙船ではなく、23世紀の未来人が乗ったタイムマシン(航時機)だった。母船( Mother )と呼ばれていた。彼らの提案は、1945年のラゴス島に行って、ゴジラザウルスを別の場所にトランスポートして、ゴジラを出現させた歴史的原因を除去してしまおうというものだった。
  内閣は、ゴジラの調査研究を進めるフリージャーナリストを彼らに同行させた。未来人たちは、恐竜をアリューシャン列島のどこかに移動させて、「現在」に戻ってきた。こうして、ゴジラ出現の因果関係は除去され、歴史からゴジラの存在は消え去った。

  ところが、未来人たちはラゴス島に、23世紀の遺伝子工学や生化学の技術を駆使して創出したペット用の人造生物、ドラッドを3頭置いてきた。ドラッドは、大きさが15センチメートルくらいの、翼を供えた手乗りの竜だ。
  この3頭の生物は、1954年、アメリカの核実験の影響を受けて突然変異、合体して巨大な怪獣、キングギドラになった。この怪獣は、未来人がもつ超音波発生器によって捜査される習性をもっていた。
  キングギドラを操ろうとする未来人のねらいは何か。1990年代以降、未曾有の経済的繁栄を持続していった日本は、23世紀に世界覇権を握っていて、アメリカやヨーロッパ連合は何とかその力を削ごうとしていた。「母船」に搭乗してやって来た若者たちは、キングギドラによって日本の諸都市や産業を破壊して、日本が繁栄して富と権力を膨張させる歴史の因果連鎖を除去しようとしていた。
  こうして、母船が1990年代に戻るや、ゴジラは消滅していた。Gフォースのレーダーでは、若狭湾沖のゴジラが突如消滅し、変わって九州北部に別の巨大な怪獣が飛来した。

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