ナウシカの世界 目次
ナウシカたちはどんな世界に生きているのか
あらすじ
生き物はすべて遺伝子組み換え「人工生物」
アニメの物語  発端
エフタル王国
風の谷とペジテの悲劇
残忍な侵略者、トルメキア
2人の王女
腐海の生物のはたらき
主な登場人物
粘菌と腐海の蟲たち
生き物としての粘菌
大海嘯、そして集結
憎しみと和解
クシャナの騎士連隊
クシャナの生い立ち
和解
巨神兵の復活
シュワの墓所と滅びた文明
墓所の破壊と生物の未来
この物語を読み終えて考えること

腐海の生物のはたらき

  皇帝が戦争に利用したあげく絶滅させようとしている腐海とは、なんでしょうか。とりわけ、生態学的に見た場合に、腐海の森と蟲たちはどのようなはたらきをしているのでしょうか。

  ナウシカは腐海の生物のはたらき、その意味、生態系のなかでの役割について気づいています。
  ナウシカは風の谷の領主館の地下室で、清浄な環境でヒソクサリなどの腐海の植物や菌類を育てたらどうなるかを実験・研究していました。清浄な環境では、植物や菌類は瘴気を放出しないのです。
  ひどい毒性をもっているのは、人類が生きるこの世界(土壌、大気、水)なのだ、と。

  むしろ腐海の植物(菌類)たちは、全面的に汚染され、破壊された生態系、土壌、水などを浄化するはたらきをしているのです。蟲たちは、そういう植物を守っているのです。

  菌類は地中深くに根を張り、地上高くそびえます。
  植物は、成長するために吸収した土壌成分や水、空気から有毒物質を固め無害化し、鉱物結晶として体内に蓄えます。
  ある世代の植物の繁茂が頂点を過ぎ衰弱して枯れると、石化し、やがて美しい結晶に分解し堆積します。その層の上に新たな世代の植物が育成します。こうして、重層的な構造の鉱物の地層ができ上がります。

  こうして、下層からしだいに清浄な土壌と空気層がつくりだされてくるのです。
  そういうはたらきをする森を蟲たちが守っているという生態系ができ上がっているわけです。

  ナウシカはアスベルとともに腐海の森の上空で墜落して、森の「底の底」まで落下したときに、そこには、植物たちの活動が無害化して小さな結晶に変えた鉱物の砂が堆積していることを知ります。
  アスベルは言います。「この世界が浄化されるためには、ぼくたち人類は滅びるしかなさそうだ」と。
  そう、人類こそがこの世界の生態系を汚染させ破壊しているのだ、と。 

  旧人類は、汚染された環境から生態系を浄化し回復させる機能を、菌類、腐海の植物の遺伝子プログラムに組み込んだのです。蟲たちは、この菌類、植物の保護と繁殖の手伝いをしているのです。そのような機能を果たすように遺伝子組み換えで創出された生物群なのです。
  オームの脳あるいは神経に、この使命が遺伝子的にインプットされているようにも見えます。
  シニカルな見方をすれば、この世界に現生する生物たちは、ナウシカたち人類も含めて、滅び去った旧人類が人為的に組み立てたゲイムのプログラムにしたがって生きているように見えます。ところが、そうではあっても、かけがえのない生命活動をしているようにも見えます。

  オームの使命(あるいは本能と呼ぶべきかもしれません)とは、腐海の森の浄化作用を助けること、ほかのすべての生き物と共生する、共感することなのであるかのようです。
  闘い合い、食い合い、同時に依存し合う複雑な関係のなかで生き物は生きている。人類も・・・。宮崎駿はそんなメッセイジを込めているのかもしれません。

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