打ちひしがれて逃げてきたドルク諸族の民衆、そしてクシャナが率いるトルメキアの騎士連隊、アスベルらが参加する対トルメキア抵抗軍は、同じ高原で出会います。
これらの遭遇と集結は、侵略者とその被害者、そして復讐を求める勢力という敵どうしが対峙するということでもありました。
ここで、王女クシャナが率いる騎士連隊について触れておきましょう。
クシャナに直属していた騎士連隊は、訓練が行き届き、規律と士気が高く、すぐれたティームワークと結束力を誇っていました。
ところが、それゆえにこそ、王女の力を削いで無防備にするため、トルメキア王はこの連隊をクシャナから引き離し、ドルクの最も過酷な戦線に送り出しました。
死地に追い込んだのです。
過酷な各戦線で援護もなく孤軍奮闘する騎士連隊は、壊滅寸前です。
クシャナは、トルメキア王直属の軍から飛行艇や兵器を奪って、窮地に追い込まれた連隊のメンバーを次つぎに救出していきました。そして、連隊として1つの組織にまとめ直しました。
そして今、高原地帯で彼らが侵略し蹂躙したドルクの民衆やパルティザン(反乱民衆軍)と鉢合せすることになりました。
圧倒的多数の民衆がクシャナの騎士連隊を取り囲んでいます。パルティザンは数の優位を力に、憎いトルメキア軍の片割れとしてのクシャナの連隊に復讐戦を挑もうとします。
この窮地のなかで、クロトワは民衆を相手に戦い脱出の血路を開こうと提案します。けれども、クシャナは拒否し、和平交渉を求めます。
彼女は今では、ナウシカの生き方に共感を覚え、戦いの道を放棄しようとしているのです。それで滅びるなら仕方がないと。
ナウシカの姿は、かつての、幼い頃のクシャナ自身でもあるようです。
王族が権力の座をねらって互いに争い殺し合う、陰謀渦巻くトルメキアの宮廷。そのなかにあって、クシャナは幼くして、身を守るために「修羅の道」、つまり優れた戦士=軍人、冷徹な将軍になる道を選びました。
それは、襲い来る死の恐怖に脅える心を、無慈悲な戦士の鎧で覆い、繊細な感情を閉じ込める態度を選び取ることでした。
その結果、戦場から戦場を駆けめぐることになりました。
今、クシャナはそんな生き方から逃れようとしているのです。