ナウシカの世界 目次
ナウシカたちはどんな世界に生きているのか
あらすじ
生き物はすべて遺伝子組み換え「人工生物」
アニメの物語  発端
エフタル王国
風の谷とペジテの悲劇
残忍な侵略者、トルメキア
2人の王女
腐海の生物のはたらき
主な登場人物
粘菌と腐海の蟲たち
生き物としての粘菌
大海嘯、そして集結
憎しみと和解
クシャナの騎士連隊
クシャナの生い立ち
和解
巨神兵の復活
シュワの墓所と滅びた文明
墓所の破壊と生物の未来
この物語を読み終えて考えること
宮崎駿が描く物語
宮崎駿の作品世界を考える

エフタル王国

  年代記によれば、今から数百年の昔、腐海はずっと小さく、この大陸のはるか内陸部にとどまっていました。
  その頃、エフタルという王国が広大な支配地を擁し、巨大な都市群を建設し、旧人類ほどではないにしろ、そこそこ高度な機械工業と商業が栄えていました。都市には富裕な階層が暮らし、飛行機や兵器の増産に明け暮れ、ひたすら利潤を追求していました。

 この王国の繁栄は、旧人類の工業文明の遺物の発掘や利用から始まったのかもしれません。滅び去った旧人類の工業文明を後追いしていたわけです。
  エフタル人たちは、深い地下から旧人類の文明の断片を掘り出して、使えるように修復したり模倣したりして高度な工業文明を築き上げ、大規模な加工貿易を組織してたようです。

  エフタルの製造業者と商人たちは、やがて腐海の森から資源を収奪する方法を編み出し、オームをはじめとする蟲の狩猟と殺戮、すなわち蟲狩りを繰り広げるようになりました。
  たとえば、殺したオームの眼球をおおう堅いガラス質の膜とか蟲たちの外被は、航空機や武器の装甲として利用したのです。

  腐海の蟲たちは、エフタル人(人類)を敵と見なして反撃し始めました。ついに、怒りに燃えたオームの大群がエフタルの主要都市群を襲い破壊しつくしてしまいました。蟲の群れは命が尽きるまで走り続け、エフタルの主要部を蹂躙し、やがて死を迎えました。

  無数の蟲たちの体に付着した腐海の菌類は、その遺骸を苗床にして急成長し、エフタルの大半の地域を覆い尽くしてしまいました。この大陸の広大な空間が、いまや腐海に没することになりました。
  人類が住める場所は、大陸の縁辺だけになったのです。

  こうして、蟲の大群の暴走拡散によって人類の生存空間が滅び去って一挙に腐海が膨張する現象を、古老たちは「大海嘯」と呼んで、恐れています。大海嘯とは、もともとは巨大な津波の波頭が広がり押し寄せる様を意味しています。

  ところで、大陸を囲む海は、あらゆる有毒な汚染物質が流れ込んで濃縮されたため、完全に「死の海」となっています。そして、内陸部には金属がすぐに溶けてしまうほどの「酸の海」が広がっています。
  ある海岸には、旧人類が恒星間・惑星間の宇宙航行に使っていた宇宙船の半ば砂に埋もれて残骸が横たわり、今では、超硬質・高性能の金属を採掘する鉱山になっています。

■風の谷とペジテの悲劇■

  エフタルの滅亡からおよそ300年の後、風の谷は――その昔、エフタルの領土の一部でしたが――、いまや海の近くにポツンと孤立して農耕を主とする集落群となりました。
  いわば辺境の小さな部族侯国で、その族長=領主がナウシカの父、ジルなのです。ナウシカは小国の王の娘で、ジルの家門でただ1人生き残った王女、姫君なのです。

  今、風の谷は、この一帯のほかの小侯国と同じように、近隣の軍事強国トルメキアの属国となり、トルメキア王が要求する軍役に、指揮官としての領主と兵を派遣するすることを条件に防衛上の安全保障を与えられているのです。

  そこから少し離れたところにあるのが、工房都市ペジテです。
  この都市国家は滅びたエフタルの生き残りで、その住民の主要産業は、いまでは地下に埋もれた旧人類やエフタルの遺物、飛行装置のエンジンや兵器の部品を掘り出し、修理ないしは再加工して輸出することです。

  ところが、あるとき、ペジテの技術者はかなり深い深度の地中で、巨大なセラミックの骸骨を掘り当てました。巨神兵の頭蓋骨と骨格、そしてそれを取り巻く装置です。
  この装置の窪みにぴったりはまる石を見つけてはめ込むと、なんと巨神兵の細胞が増殖を始めて肉塊となり、血管や筋肉が成長を始めたのです。それは、巨神兵を生み出す胎盤装置だったのです。

  ここから、ペジテの悲劇=滅亡と、この一帯を巻き込む大戦乱と破壊、殺戮、略奪が始まったのです。巨神兵の胎盤を地中に埋め込んだのは、ドルク帝国の謀略で、大戦乱を引き起こすための引き金としたようです。

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