核軍縮の米ソ交渉は、当時の東欧レジームのなかに孤島のように孤立したベルリン市でおこなわれたため、アメリカ軍は会場の周囲の森林地帯を陸軍の特殊部隊によって警備した。
その任務にあたった小隊の1つが、合衆国陸軍のジョニー・ギャラガー曹長の隊だった。
ギャラガーたちはその日、森のなかで不審なカップルのハイカーを発見した。ただちに本部に報告して指示を仰いだ。本部の指揮官は、地元の警察に引き渡すように命じた。
ところが、まるで事態を見越していたかのように、間をおかずに東ドイツの警察がワゴン車でやってきた。ギャラガーは、ハイカー2人の荷物を検査するように伝達して、警察隊に2人を引き渡した。
ところが、地元警察も陰謀に加担していて、地元の警察は、交渉会場からの道路の近くの森のなかに2人を逃がした。
さて、交渉に臨んだアメリカ側の実務代表のなかには、核軍縮に強行に反対するホプキンズ将軍が含まれていた。彼は将軍たちを説得して反対派に加わるよう事前工作を進めていた。
しかし、カールスン将軍は軍縮推進派で、ホプキンズの説得に反論した。
そこで、ホプキンズは仲間にカールスンを暗殺する手はずを指示した。
まもなく、予備交渉は終わり、交渉団は帰途についた。そのなかで、カールスン将軍だけは、別の車で早めに会場を出た。
■異変の始まり■
あの2人のハイカーはカールスン将軍を襲撃するエイジェントだった。2人は、バッグから機関銃を取りだすと、道路に近づいていった。
ギャラガーの小隊は森のなかでふたたび2人のハイカーを発見して追跡し、捕縛しようとして銃撃戦になった。
ちょうどそこに、カールスン将軍を乗せた車がやってきた。
ハイカー2人は追手の小隊をを振り切って道路に接近し、車を襲撃し弾丸の雨を浴びせて将軍と運転手、そして護衛官を殺した。
そこにギャラガーたちが追いついて戦闘が再開した。
ところが、アメリカ大使館の公用リムジーンが来て、2人を救出していった。どうやら、謀略の手は国務省や大使館にもおよんでいるようだ。
ギャラガーは小隊とともに本部に帰還して、事件を報告した。
その場に軍情報部の大佐、グレン・ウィテイカーが居合わせて、将軍暗殺はギャラガーの不手際だと詰問した。ギャラガーとウィテイカーとは犬猿の仲だった。
というのも、ギャラガーはラテンアメリカや中東で秘密作戦に何度か参加したが、ウィテイカーが指揮をすると、いつも現場を知らない頭でっかちの作戦指揮をするために混乱し、強硬な作戦を発動して隊員に死傷者が出たからだ。
ギャラガーは、作戦指揮のミス――無謀な指揮――について面と向かって批判したため、ウィテイカーはギャラガーをひどく嫌悪していた。