ウォーキング with モンスターズ 目次
恐竜よりも古い動物たち
見どころ
古生代カンブリア紀
身体の形状と構造
シルル紀
内陸河川への進出
デヴォン紀
石 炭 紀
ペルム紀
①ペルム紀初期
プレデターの産卵・孵化
②ペルム紀晩期
砂漠での生存競争
古生代の終焉
ペルム紀から中生代三畳紀へ
恐竜類の時代へ
「大量絶滅」の古生物学
大量絶滅の痕跡の年代記
大量絶滅の主要な原因

地質年代図を見る

古生代の終焉

  ところがマントル対流がふたたび活発になりプレイトの劇的な移動が始まった。大陸地殻の変動と気候の激変が始まろうとしていた。

  あのゴルゴノプスはある意味では爬虫類の限界を超え出ようとしていた種ではあったが、環境の激変には耐えられず、滅び去ってしまった。この映像プログラムのこの部分については、私はよく理解できない。
  乾燥化がさらにひどくなって、餌となる動物が死に絶えたことでゴルゴノプスは絶滅したのか。それとも、恐ろしい砂嵐=気候変動がやって来たことで、餌だけでなく、全体として生存できない環境になったのか。いずれにせよ、食物連鎖ピュラミッドの頂点に君臨した動物は、大規模な環境変動のもとで生き残ったことはない。
  とにかく、獣弓類(哺乳類)型爬虫類から哺乳類への進化の道筋は(今から見ればだが)かなり迂回することになる。
  映像の舞台は、そこから200万年ほど進んだ時期になる。

ペルム紀から中生代三畳紀へ

  2億4800万年前。古生代ペルム紀と中生代三畳紀との境界の時期。パンガエアはいまだに存在しているが、徐々にいくつかの支大陸(それでも巨大)に分裂しようとしている。だが、分離を始めた大陸の裂け目の奥深くまで海洋が進出してきた。
  そこで、気温は現在よりも40%温暖な状態になり、大陸と海洋の水の循環システムが働き出した。大陸の多くの部分はふたたび繁茂した植物(まだ気候は厳しかったので主として針葉樹)によって覆われるようになった。

  さて、物語の舞台は、何と南極(現在の南極となる大陸部分だが、地球上での位置・緯度についての情報は示されない。とにかく、温暖な気候だという。
  広大な草原いっぱいにある哺乳類型爬虫類が広がって、植物を食べまくっている。リュストゥロサウルス( lystrosaurus :「シャベルのようなトカゲ」)だ。体長は1mから1.5mくらいで、植物食。貪欲に植物を食べ続ける。個体数が膨大だから。広大な草原の植物は短期間に食べつくされてしまう。
  だから、膨大な数の群れが生き延びるためには、一定期間ごとに絶えず移動しなければならない。
  リストゥロサウルスの大群が移動を始めた。植物食の動物が大きな群れをつくって移動するのは、彼らを捕食するプレデターたちによる被害の比率を小さくして、種=群れとしての生存率を維持するためだ。とりわけ移動という行動には、必ず移動経路の途中(場所ごと)にプレデターによる襲撃の危険があるから。
  そして、捕食者たちにとっては、一定の季節的なリズムに応じて獲物となる動物の群れがやって来るということが、繁殖行動を始めるきっかけとなっていく。


  リストゥロサウルスの群れは、夜になって狭い谷間を通り抜けることになった。大群が狭い経路を1頭または数頭ごとの列になって移動するしかない。プレデターにとっては、谷の上側で待ち伏せて獲物に狙いを定めて襲いかかる準備を整えることができる。
  リストゥロサウルスを待ち伏せていたのは、テロケファリア( therocephalia :「猛獣の頭部、獰猛な顔」という意味)。体長は、リストゥロサウルスと同じくらいだが、頑丈な頭部を備えている。この頭部の化石には、鋭い歯が並ぶ強靭そうな顎があったことから、捕食者として成功した、つまりしたたかな攻撃力を備えた猛獣だったはずだと考えられている。
  やはり哺乳類型爬虫類で、噛みついて牙の付け根から神経毒を出し、獲物の身体に毒を注入して仕留めるのだという(これはたぶんBBCの脚色)。
  テロケファリアの群れは、1頭のリストゥロサウルスを殺して食べ物にありついた。この貴重な犠牲(いけにえ)のおかげで、群れのほかの個体は谷を無事に通過することができた。

  やがて、リストゥロサウルスの行く手に、巨大な窪地が現れた。窪地の底には幅の広い川あるいは細長い湖沼が横たわっていた。窪地の向こうには、緑滴る広大な森と草原が広がっていた。
  リストゥロサウルスが食べ物にありつくためには、この川・湖沼を渡らなければならない。この渡渉は、毎年の恒例行事になっているという。
  ところが、この水辺には恐ろしいプレデターがいることを、彼らは経験から知っていた。大群の列の先頭を切っていたリストゥロサウルスの一群は、水辺で立ち止まった。水中には凶暴な爬虫類、プロテロスクス( proterosuchus :「原初期のワニ」)の群れがいるのだ。

  しかし、仲間の群れは後から後から押しかけてくるので、止まることはできない。押し出されるように、先頭集団が水中に飛び込んで泳ぎ始めた。
  プロテロスクスたちは、水辺の対岸で日向ぼっこをしていたが、対岸から大地を踏みしめる動物の足音が響いてくると、水のなかに入っていった。彼らも、毎年、同じ時期にリストゥロサウルスの大群がここを渡渉することを記憶していた。そして、巧妙な狩りの方法を編み出していた。
  まず先頭の集団が対岸に泳ぎ着くのを見すます。すると、ますます多数のリストゥロサウルスが対岸をめざして泳ぎ出す。そのタイミングを狙って、それぞれが目標にした1頭1頭を襲って仕留めるのだ。こうして、プロテロスクスはごちそうを心ゆくまで飽食するのだ。
  だが、何万頭にもおよぶリストゥロサウルスは、種全体としては、きわめて小さな割合の犠牲で、豊かな緑の広がる沃野に渡ることができるのだ。

  ところで、プロテロスクスは体長が5m前後の爬虫類で、ワニの遠い祖先である。映像では、現在のワニよりも4本足で支える胴体の位置が高い。胴体の腹を地面に擦るような歩き方ではなく、腹は地上よりも数十㎝以上高い位置にある。
  おそらく、化石の形状から、脚の付け根の関節の構造が、現在のワニほど特化していないのだろう。まあ、この時代の普通の爬虫類の脚の姿勢で復元したということか。

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