2005年にBBCでテレヴィ放映された自然史番組 《 Walking with Monsters 》 の北アメリカ版が 《 Walking with Monsters : Life before Dinosaurs 》―― Discovery Channel シリーズ――だ。恐竜が誕生する以前の地球上における動物の進化の歴史を描いた秀作である。
地球の誕生や原始地球の様子が冒頭に出てくるが、テーマとして描かれるのは古生代カンブリア紀から中生代三畳紀前期までの動物の進化史である。こうした動物の進化の背景になった地球環境の変化をも紹介している。
原題は、Walking with Monsters : Life before Dinosaurs (2006年DVD制作)。邦訳すると「怪物たちと歩く:恐竜よりも前の生物」とでもなろうか。
映画「ジュラシックパーク」シリーズでは、アングロ・アメリカン地域の自然史CG映像の創作技術の圧倒的な高さが誇示された。その技術水準の高さは、教養・教育プログラム(映像)制作に携わる膨大な数のCG制作者ならびに彼らを支える科学者たちのバックアップの存在によって、裏打ちされている。
とりわけBBCで「生物関係の仕事をしている」とえば、この世界では、スーパーエリートであるという証明書のようなものだ。
たとえば、あのアッテンボロー博士。BBCのフィールドワーカーだが、世界最高の生物学者の1人であり、生物進化に関する彼の洞察は並ぶ者がいない。
BBCの自然史・生物映像制作・取材陣は、並の学者では太刀打ちできないくらいのフィールドワーク=デスクワーク能力や技術を持っている。制作にかかわる映像技術者もまた「エリート職人」で、数と質が飛び抜けている。
アングロ・アメリカンの生物・教育関連のCG映像技術は、それが標準になっているようだ。
だから、ハリウッドから映画づくりで技術スタッフ募集の声がかかれば、ものすごいハイレヴェルの応募競争、選抜、組織化が展開する。NHKも含めた日本の放送局とかCG業界スタッフの量・質なんかとは、まるきり比較にならない。天地の差がある。
そういう凄さが、たとえば、この「ウォーキング・ウィズ」シリーズなどから垣間見えてくる。
ここでは、映像物語の展開を追いながら、生物進化の歴史を追いかける。なお、番組制作後に、新たな古生物学の有力説で訂正されたことがらについて、いくつか補足訂正していく。
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