古生物学で一応検証されている大がかりな絶滅現象の主なものは、次のとおりだという。
○前カンブリア紀・エディアカラ紀の終わりの絶滅(およそ5億4200万年前)
・カンブリア紀・ボトム紀の終わりの絶滅(およそ5億1700万年前)
○カンブリア紀/オルドヴィス紀境界の絶滅(4億4800年前)
◎オルドヴィス紀/シルル紀境界の絶滅(4億4500万年~4億4400万年前)
・シルル紀イレヴィーケン化石群の絶滅(4億7700万年前)
・シルル紀ムルデ化石群の絶滅(4億2400年前)
◎晩期デヴォン紀の絶滅(3億6000万年~3億7000万年前:石炭紀への移行直前)
◎ペルム紀/三畳紀境界の絶滅(2億5100万年前)
◎三畳紀=ジュラ紀境界の絶滅(2億500万年前)
・ジュラ紀トゥール化石群の絶滅(1億8300万年前)
・白亜紀前葉の絶滅(1億1800万年前)
◎白亜紀/第三紀境界の絶滅(6500万年前)
* ◎は、「ビッグ5」と呼ばれる大量絶滅。○はそれに次ぐ規模と見られるもの。
これだけでも、だいたい2000万年~5000万年の間隔で、化石群としては顕著な生物群の消滅が発生してきたことがわかる。
生物群の大量死滅、生存種の目立った減少は、生存環境が急激に変化して、生物群が生きるために必要なエネルギー源(食物)となる生物が消滅することによって起きる。たとえば、気温の低下や上昇、これらにともなう乾燥化、大陸移動による気候変動や、寒冷化(氷河期)による海退(海が退き陸地が増えること、温暖化による海進(海が大陸に入ってきて陸地が減ること)などである。
たとえば、オルドヴィス紀終りの絶滅事件では、プレイトテクトニクスで大規模な大陸移動が起きて、ほとんど大陸が北極に向かって集積していき、寒冷化=氷河期が到来、これにともなう海退によって大陸棚に生息していた海洋無脊椎動物群が絶滅したのだという。
ところで、この1000万年間におよぶ大量絶滅の過程には、少なくとも2段階で2つのピーク(底というべきか)があるという。プレイト運動のダイナミズムの中途での変動・転換があったのか。
古地層の地磁気の痕跡(古地磁気という)の分析では、ゴンドワナ大陸(将来、アフリカ、インド、南アメリカ、マダガスカル、オーストラリアなどになる)はいったん南下して南極を通過して北上していったらしい。そうすれば、南極への移動時に1回絶滅傾向が生じ、次に北極への接近で2度目の絶滅傾向が生じたであろう。
とはいえ、時代が古ければ古いほど、時期画定・時期測定はアバウトになる。だから、絶滅を含めたイヴェントの期間はあいまいで長くなる。
このことは、次の大規模絶滅事件にも当てはまる。つまり、晩期デヴォン紀の絶滅だ。この事件の発生期間もまた、1000万年以上にわたるらしい。
ここでも、プレイト運動が激化して大陸構造の大変動が背景にあるという。ラウラシア(ローレイシア)とゴンドワナとはしだいに接近して、やがて将来のパンガエアを形成するようになる。当然、これらのプレイト上の大陸塊や島嶼、海洋などでは地殻・地勢はもとより気候の大変動に見舞われたであろう。
そして、生存危機に直面したのは浅い海洋や珊瑚礁に生存していた生物種だった。浅海生物種のほとんどが消滅の淵に追い込まれたらしい。