クイックシルヴァー 目次
自転車で再出発
原題と原作について
見どころ
あらすじ
自転車大好き!
ジャック・ケイシイ
ツキのない1日の始まり
挫 折 !
打ちのめされた父の姿
新たな生き方を求めて
仕事仲間たち
少女テリ
それでもジャックはジャック
ふとした疑問
自転車の曲乗り
勝負や賭けを避けるジャック
ヴードゥーの死
恋人との別れ
最後の株取引
テリとジプシー
ジャックとジプシーとの対決
再   会
株式市場という理不尽な世界
Office-Townwalkのサイト
信州まちあるき

自転車大好き!

  この映画が気に入ったのは、私もサイクリングが好きだからだ。それも、都会のなかを駆け抜けるというのがいい。もちろん、田園風景とか森のなかを走るのは、もっと気持ちがいいものだが。
  とはいえ、私は競技やバイクトレッキング用の高価な自転車を持っているわけではない。
  むしろ、通勤のときに車を運転しながら、渋滞している車を横目にして、サイクリングスーツを着て「いかした自転車」で走り抜ける人たちの姿を、羨ましげに眺めている場合が多い。
  それで、会社勤めをしていた頃には夏場になると、片道10キロメートルほどの道のりを何回かは自転車で通勤する機会を設けていた。
  そのときの気分といったら、本当にグレイト!。
  だから、自転車が中心的な役割を与えられて登場する映画となれば、ただ観ているだけで気分は爽解になる。
  それだけでなく、この映画には、私の心に強く迫ってくる何かがある。

ジャック・ケイシイ

ジャック・ケイシイは、若いがやり手の株式仲買人ストックブロウカー。ニューヨーク、ウォール街の証券取引所(NYSE)で、目まぐるしく変化する企業(とくにヴェンチャー)の株価を追いかける。
  この頃(1980年代半ばまで)のNYSEでは、株式情報のコンピュータ化が目覚しく進んでいたが、取引では、まだ「場立ち」取引が主流で、仲買人たちがひしめき合って、売り買いの注文や交渉をしていた。
  ジャックのやり方は綿密な情報分析と大胆な賭けだ。堅実に業績を伸ばしているけれども評価の低い企業の株を買い付けておいて、値上がりを待ち、その株価の上昇が始まると、タイミングを見計らって一気に売り抜ける。リスクを引き受けてハイリターンを狙う。そういう株式の目まぐるしい売り買いを、毎日、いくつもの銘柄について抜け目なくおこなう。
  彼の手許で、夥しい数の株券が行き交っている。まとめて買い付けて売り抜けるから、1株(取引単位)あたりの上昇幅が1ドルでも、何万株、何十万株まとめてとなると、1日の利ざやは何万ドル、何十万ドルにもなる。
  ジャックはNYSEの寵児で、わずか2週間で4000万ドルの利ざやを稼いだという「伝説」をつくり上げた若者だ。リスクを引き受けて賭けに出るため、彼は目をつけた企業の情報を丹念に集めて詳細に分析していた。
  だがある日、綿密な分析と勘が外れて、それをたった1日で失ってしまった。

ツキのない1日の始まり

  その日は朝から、ケイシイは賭けに破れていた。高級住宅街の自宅近くからウォール街まで行くためにタクシーを拾った。だが、ニューヨークのダウンタウンの道路はいつもどおりの大渋滞。イエロウキャブは車の列と交差点の信号機によって、進行を寸断され行く手を阻まれ続けていた。
  と、車の隙間を縫うように自転車に乗った若者が走り抜けた。黒人の青年で、自転車急送便のお仕着せベレー帽をかぶっていた。その若者は、洒落たコートを着てヤッピー然としているジャックに目を向けると、タクシーと競うように走り出した。
  挑戦の眼差しを感じたジャックは、運転手に「次の地下鉄駅まであの自転車と競争して勝ったら50ドルをやろう」と提案した。運転手は張り切ったが、なにしろ世界で一番すごい渋滞空間の1つに嵌まり込んでいるのだから、車の動きはままならない。
  運転手は車道の隙間を見つけては強引に割り込んだが、自転車は車間の隙間だけでなく、歩道にまで走り込んでいく。結局、わずかな差で、自転車が勝ちを収めた。走り去る若者は、しかし、ベレーを落としていった。
  ジャックは、すぐにタクシーを降りると、運転手に50ドルのボウナスを渡して、ここからは歩くことにした。そして、走り去った自転車便が道に落としていったベレーを拾い上げた。「クイックシルヴァー」という文字刺繍が入っていた。

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